otomeguの定点観測所(再開)

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井村君江ZOOM講義「おぼえておいて欲しいこと」【NLQオンラインセッション#12】講義ファイル4「コティングリー妖精事件とその周辺 その2」レポート

 遅くなりましたが、先日17日夜、当ブログでいつもレポートをあげている、井村君江先生のZOOM講義がありました。井村先生のお話と、講義後に様々な話題で盛り上がったディスカッション、浅学の私では扱いかねる話題も多々あったのですが、私に理解できる箇所をかいつまんで雑駁にまとめてみます。

  

井村君江 - Wikipedia

Cottingley Fairies - Wikipedia

うつのみや妖精ミュージアム - Wikipedia

トップページ (fairy-link.net)

アトリエサード (a-third.com)

アトリエサード【公式】さん (@athird_official) / Twitter

岩田恵@アトリエサードさん (@mahamayuri) / Twitter

岡和田晃_新刊「NLQ25 病疾に蠢く死の舞踏」が出ましたさん (@orionaveugle) / Twitter

『コティングリー妖精事件 イギリス妖精写真の新事実』 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

井村君江ZOOM講義「おぼえておいて欲しいこと」【NLQオンラインセッション#11】講義ファイル3「コティングリー妖精事件とその周辺 その1」レポート - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2019SFセミナーレポートその7 ナイトランドクォータリーの部屋 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 なんぼでも貼れますが、とりあえずこんなもんで。

 前回の内容については上のリンク先を見てほしいのですが、井村先生の講義は前回の内容の補足及び続きからとなりました。まずは、コティングリーに関する資料が収められている、リーズ大学のブラザートン・コレクションを閲覧に訪れた時の話から。現地で諸々トラブルが起きて、調査に十分時間が取れなかったうえ、鉛筆での模写は認められているが写真撮影は認められないとのことで、かなり難儀したそうです。そのため、様々なものを調べたものの、ガードナーの手紙までは見られなかったとのこと。この調査は後進に引き継がれるということでしょうか。

 また、先日から問題になっている「第3の少女」の存在。ベレー帽の少女だそうですが、こちらについても詳細は分からなかったそうです。示唆する資料が出てきたというだけでもすごいことですが、これも後進の研究が待たれるというところでしょう。

 1910年代当時のイギリスの写真には、農家や農村の写真が多く、家族の写真も多かったとのことです。カメラが一般に広まり、ある程度裕福であれば、子供がカメラを構えることができた時代だそうです。これも前回も出た話題ですが、写真史的には、コティングリーはイギリスの田園地帯の写真史の一隅に位置づけられるのでしょう。リーズ大学での調査に同行した方が語っていたのですが、妖精のスケッチなどを写しながら感じられたのは、少女たちは楽しんで妖精の絵を描き、写真を撮っていたのではないかということ。あくまで子供の遊びだったということです。それが大人たちの手によって大ごとになってしまい、引っ込みがつかなくなってしまったのでしょう。

 ちなみに今、ガードナーの鞄はオークションで落札したものが井村先生のご自宅にあります。岩田恵さんが「ガードナーのかばん」と書かれた段ボールを発見し、画面越しに鞄の実物を見せてくださるという、貴重なサプライズもありました。これぞライブ配信の醍醐味ですね。ガードナーの鞄の中身については、上のリンクの青弓社の書籍をご覧ください。

Edward L. Gardner - Theosophy Wiki

 井村先生によると、妖精と呼ばれる表象=造形の条件は、「裸であり」「羽が生えていて」「飛ぶ」こと、そして天使のようであるが天使とは異なる様相で描かれた存在のことだそうです。妖精の造形の歴史については、前回も「エルフ耳」についての話が出ていました。

dic.pixiv.net

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 エルフの耳をあそこまで長くしたのにディードリットの影響もあることは否定できませんが、今回の議論では現代のエルフの造形の元祖として、『ダーク・クリスタル』のキーラがあげられていました。

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ダーククリスタル - Wikipedia

伝説のヒロイン「ダーククリスタル』のキーラ | 高田明美オフィシャルブログ「Angel Touch」Powered by Ameba (ameblo.jp)

【『ロードス島戦記』出渕裕×『ペルソナ』副島成記:対談】「エルフの耳はなぜ長い?」次世代に受け継がれるビジュアル作りに隠された秘密を探る【新生・王道ファンタジーを求めて②】 (denfaminicogamer.jp)

 エルフをはじめ妖精の尖った耳、妖精の羽など、我々がアイコン的に認識している妖精の造形には昔からいろいろなパターンがあったそうです。今回の議論では、シェイクスピア『真夏の世の夢』の挿絵まで妖精の尖った耳は遡ることができる、という話も出ていました。まだまだいろいろ出てきそうですね。

 妖精が身近な存在であった、中世・近世のブリテン。超自然的な存在が実在すると思われている社会には、超自然的なものが傍らにいる・あるとする文化的な効果があります。これが時を経て制度化し、アイコン化しました。キリスト教の世界観と妖精の存在は親和性が高く、神と敵対する悪魔としてではなく、天使とも異なる土着の説話的な存在として妖精が受け継がれてきました。

 ブリテンブルターニュではキリスト教ケルト文化と結びつき、ないしキリスト教の影響下でもケルトの伝統が守られ、受け継がれてきました。ブルターニュには現在も300人余りのドルイドがいて、輪廻的な思想が受け継がれているそうです。

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  中国における妖精の受容や、近年の中国におけるファンタジックな映画やドラマにつての議論も出ていましたが、私の知らない範囲のことが多かったので、割愛します。ろくろ首の語源は飛頭蛮で、林羅山が誤訳したために日本では首と胴がつながったろくろ首になった、なんてネタは面白かったですが。

 その他、いろいろ議論の話題が尽きず、夜11時くらいまで盛り上がっていました。今回も非常に楽しかったです。

 井村先生の講義は毎月第3土曜日に定期開催するそうで、次は8月21日です。香川のSF大会当日ですか。夜ならいけると思うので、宿泊先からの参加を検討します。