毎度毎度の遅ればせですみませんが、先日、予定されていた仕事が土曜夜に急遽キャンセルになり、これ幸いと日曜のSFカーニバルに行ってきました。トークショーも観覧したので、雑駁ではありますが感想レポートをまとめてみます。
SFカーニバル|代官山 蔦屋書店が開催する、日本SF大賞の贈賞式をはじめとした、日本最大級のSFイベントです。
SFカーニバル (@SF_CARNIVAL) | Twitter
【ぐいぐい聞きます、そこが知りたい翻訳出版!!】
https://peatix.com/event/3217547
池澤春奈さんが司会で、予告されていた早川書房・東京創元社・竹書房の編集さんに加え、当日に捕獲された河出書房新社の編集さんも急遽加わり、トークショーが行われました。出版社の翻訳をめぐる基本知識ともいえる項目で、エージェントとのやりとり、海外のブックフェア、版権の期限について、企画の進め方、作家・翻訳家とのやりとり、早川の社長の力など、これまで様々な媒体などで断片的に触れたことのある知識が上手く再構成されてまとめられたトークで、非常に良かったと思います。急遽参加の河出の編集さんが危ない話をフライング気味に突っ込んでいましたが、テキスト化できそうにない話もあったので、スルーします。
結論としては、やはり「売れる本がいい本だ」というシンプルなもの。河出が韓国に力を入れるようになったのは売れたからですし、竹書房から安定してSFが出るようになったのもやはり売れたからですし。一読者としては、買い支えることの大切さが改めて身に沁みました。
【SF作家シオドア・スタージョンを語る 大森望 × 空木春宵】
https://peatix.com/event/3217550
今回、SFカーニバルに合わせてスタージョンの『時間のかかる彫刻』が限定復刊されており、その企画に併せた大森望と空木春宵によるトークショウ。空木さんはTwitter上の検索で大森さんに捕獲されて引っ張り出されたそうで、空木さんが質問役、大森さんがスタージョンの作家としての特徴を説明する役、という構成で、「スタージョン再入門」ともいうべき企画内容でした。「再入門」のため特に目新しい知識は出なかったものの、内容の濃いトークだったと思います。
【代官山 蔦屋書店】「SFカーニバル 2022」『時間のかかる彫刻』復刊決定!大サイン会第一次参加作家情報。|カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社のプレスリリース
【時間のかかる彫刻 販売店!】
— SFカーニバル (@SF_CARNIVAL) April 17, 2022
シオドア・スタージョン『時間のかかる彫刻』の販売店です!
TSUTAYA 岩沼店
TSUTAYA 福島南店
TSUTAYA 桑野店
TSUTAYA 北習志野駅前店
TSUTAYA 所沢山口店
TSUTAYA 新所沢店
TSUTAYA 伊奈店
TSUTAYA 横須賀粟田店
TSUTAYA あざみ野店
TSUTAYA 甲府荒川店 pic.twitter.com/CL9u7jusBn
一つ触れるとするなら、やはりスタージョンの第1法則についてでしょう。久しぶりにこのキーワードが出ましたので。
通常、スタージョンの法則として有名なのはこちらです。
「SFの90%はクズである」
これが敷衍されて、あらゆるジャンルの創作物の90%はクズであり、のこり10%の良貨によってジャンルが支えられている、なんて風に解釈されます。極私的にはここ数年不作にあえぐ日本SFのクズ率はもっと高いような気がしますが。
そして、あまり知られていない第1法則がこちらです。私もトーク中に検索して思い出しました。
"Nothing is always absolutely so."
「常に絶対的にそうであるものは存在しない」⇒普遍的なものなど存在せず、あらゆるものは生成変化していくとでも解釈すべきでしょうか。トークの中でも、例えばスタージョンのジェンダー的表現について、フェミニズム的な作品と男性的なマッチョが強調された作品がともに存在する、なんて話が出ていました。ジャンルと作風があまりにも多彩にばらけ、人生においても5回の結婚をするなどあくなき変化を繰り返した、スタージョンという作家そのものを見事に言い表している言葉ともいうべきでしょう。