otomeguの定点観測所(再開)

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『ペンギン大全』感想

 本日のレビューは、先月、青土社から発売された、『ペンギン大全: 研究・保全・救護・飼育に関する基礎データ集』についての感想です。

 

 「20~30年に一度の学術的出版物」と謳われている通り、地球上のペンギン18種全てに、豊富な写真、学術的な生態や保全状況・今後行うべき活動などの詳細な解説、そして生息地や繁殖・生息数に関する詳細なデータが載っており、さらには学術的文献のインデックスも膨大に記された、文字通りの大著です。

 私は生物学の専門家ではないので、収録されたデータについて価値を判断する能力はありませんが、生態などが詳細に記されたテキストについては、今までドキュメンタリーなどで観てきたペンギンたちの映像を頭に描きながら、非常に面白く読むことができました。今年は2月に日本のペンギン研究者による労作『ペンギンの生物学』も刊行されていますが、恐らく、ペンギンについてこれだけまとまった文献が刊行される年は、今後ないのではないでしょうか。

penguin.ikimonoacademy.com

 我々が危惧すべきは、ペンギンの多くが絶滅の危機に瀕していることです。海洋汚染、漁業に伴う混獲、生息地の開発、観光客によるストレス、ノネコなど外来生物による捕食、餌生物の減少など、いずれの本でもペンギンたちの危機的な状況が科学者たちの熱を込めて綴られています。

 まずは、南半球のペンギンたちに対してきちんと関心を持ち続けること。そこが第一歩なのでしょう。