otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』感想

 今回のレビューは、毎度毎度の遅ればせで恐縮ですが、先月発売された『蒼の彼方のフォーリズム EXTRA2』の感想になります。18禁作品になりますので、不快感を催される方はご注意ください。また、内容のネタバレを含みますのでご注意ください。

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蒼の彼方のフォーリズム - Wikipedia

 制作発表から6年。一度はブランドが解散し、誰もが継続をあきらめていた〈あおかな〉シリーズ。こうして続編を手にすることができる感慨に、まず非常に大きなものがあります。一度ダメになったプロジェクトを復活させ、こうして形にするというのは、大変困難なことであり、仕事に対する並々ならぬ情熱の証です。数々の危機を乗り越えて作品を完成させた関係者の皆様に、御礼を申し上げます。

 そして、作品の出来は、こちらの予想と期待を大きく超えた、傑作と呼べるものでした。EXTRA1・真白編が極甘のイチャラブを楽しみながらひたすらに真白を愛でる典型的なファンディスクであったのに対し、

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蒼の彼方のフォーリズムEXTRA1 感想 - otomeguの定点観測所(再開)

 EXTRA2はみさきの競技者としての成長を描いたスポ根ものであり、ファンディスクではなく「正統続編」という売り文句がぴったりあてはまる王道の作品となっています。前作の大会で乾沙希を下し、そして決勝で明日香との対決も制して優勝者となった、みさき。しかし、追う立場から追われる立場になって、次の目標を見つけられずに競技へのモチベーションが薄れ、そして対戦者からのプレッシャーをうまく受け止められずに苦しむ・・・そんなところから物語が始まります。

 極私的には、4人のヒロインの中で一番メンタルが弱いのがみさきだと思います。しかも、一見いろいろこなせそうな器用なタイプに見えて、FCについていえば一芸に特化したかなり不器用な選手です。そしてなまじっか自分の欠点を理解する頭の良さを持っているだけに、言い訳が上手くて割り切りも早い。一定の水準まではいくのに、そこから伸び悩む子供って、だいたい何かの拗らせを持っていることが多いんですけど、みさきはまさにそういう子です。拗らせたみさきがいかに精神的な壁を破るかというのが、今作の大きな柱になっています。

 そして、FCのスポーツとしての骨太な描写が、今作のもう一つの柱でしょう。今作ではFCの対戦が6試合行われますが、試合の描写について、テキストにおいても画においても確かな進化が見られます。また、多くのタイプの選手・戦術を登場させ、新しいアイデアをふんだんに取り入れながら、架空の競技であるFCが進化していく様を描き、スポーツとしてのリアリティを持たせることに成功しています。

 デフォルメキャラの活用、コメディタッチの軽妙なやり取りなど、うまく緩急をつけたシナリオワークの魅力も健在で、長年待ち望んだ甲斐が本当にありました。現時点ではこの作品が2022年のノベルゲームのベストだと思います。