6月24日、カートゥーン・サルーンのケルト3部作のブルーレイボックスが届き、日曜に一気見しました。雑駁ながら感想をまとめたいと思います。
カートゥーン・サルーンJP公式 (@cartoonsaloonjp) / Twitter
『ウルフウォーカー』短評 - otomeguの定点観測所(再開)
世界最高峰のファンタジーアニメの一角、という評価でまず間違いないでしょう。記号の順列組み合わせに堕した日本の似非ファンタジーアニメではなく、背景に寓意と歴史と民俗の思いをまとわせた、血の通った泥臭いファンタジー。アイルランドに受け継がれてきたケルトの記憶。主人公の少年少女が勇気を奮い起こして疾走する姿に、我々はやはり強い矜持を見るべきなのでしょう。
三部作のテーマとして貫かれているのは「戦争」であり「支配ー被支配」。『ブレンダンとケルズの秘密』で描かれたキリスト教と異教の融合、『ソング・オブ・ザ・シー』のセルキー伝説が有する死と再生の恐るべきパワー、『ウルフウォーカー』における瑞々しいガール・ミーツ・ガールと支配に抗するアイリッシュの強い魂。これらが渦巻くようなアートと音楽によってアニメイトされ、躍動する自然への畏敬とともに観客に提供されます。民族にとっても人類にとっても大きなテーマを謳い上げた三部作。このシリーズがマイナーにとどまっていることに、日本の映像文化の拙さを感じてしまうのは、私の偏見でしょうか。
極私的には『ウルフウォーカー』を2020年のベストアニメにあげています。
2020極私的回顧その20 アニメ - otomeguの定点観測所(再開)
三部作の映像における極私的な白眉は、『ウルフウォーカー』における「ウルフビジョン」の表現です。「街の子」ロビンが狼の世界に取り込まれ、もはや人間の日常には戻れなくなる。人間の及ばない異界と異感覚そして共感覚を、わずか3分余りのアニメーションで見事に表現した名シーン。物語としてもガール・ミーツ・ガールの最も躍動する場面なので、この3分余りを堪能するためだけでも、今回のブルーレイBOXは「買い」です。