2018極私的回顧その12 コミック(一般)
極私的回顧第12弾はコミック(一般)です。ジャンル全体を俯瞰するほどの読書量がありませんので、例年通りジャンル全体のまとめは行わず、ベスト5を挙げるだけにとどめます。また、いつものお断りですが、テキスト作成に『このマンガがすごい!』およびamazonほか各種レビューを参照しています。
【マイベスト5】
1、やがて君になる
2018年は百合の当たり年でしたが、完成度と表現の昇華の度合いにおいて間違いなく頂点の一つといえる作品でしょう。繊細な心情表現、登場人物たちの細密に構成された感情の機微、周到に練り上げられたプロットが融合し、昇華された物語はたおやかでしなやかでもろくて瑞々しく極めて甘美なものです。入間人間のノベライズは、原作世界を鮮やかにトレースしつつもきちんと入間色を出していて、佐伯沙弥香の過去と心のありようを見事に描き出していました。できれば小学5年生時代の百合のなれそめについてもっとページを割いてほしかったところですが、これは小児性愛者としての願望になってしまいますね。
2、天国大魔境
『このマンガがすごい!』オトコ編1位作品ですが、現在のところ、この作品が石黒正数の最高作品だと思います。ポストアポカリプスの終末世界が精細に描き込まれたディテール、心地よく無慈悲な世界観、躍動する戦闘描写など、これまでの石黒作品には見られない作風が特徴ですが、これは《アフタヌーン》だから実現したマッチングでしょう。やはり四季賞出身者は《アフタヌーン》で連載するべきですね。まだ物語は序盤なので、これからの盛り上がりも楽しみです。
3、銀河の死なない子供たちへ
『オンノジ』『ヨルトネル』の系譜に連なる、施川ユウキの哲学的(??)コミックのです。不死の存在であるがゆえに死について問う主人公たちの道行きは、イノセントな子供だからこそなしうる根本問題への直義的なアプローチです。2人の出自が明らかになり、一つの救済が与えられるラストシーンには、作者なりの文明観が発露されているといってもいいでしょう。
オンノジ (ヤングチャンピオン・コミックス) (ヤングチャンピオンコミックス)
- 作者: 施川ユウキ
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2013/04/19
- メディア: コミック
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4、ディエンビエンフー TRUE END
ディエンビエンフー TRUE END(3) (アクションコミックス(月刊アクション))
- 作者: 西島大介
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2018/09/12
- メディア: コミック
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《IKKI》休刊で一時は完結を見るのをあきらめていた物語ですが、ヒカルとプランセスの恋物語はめでたくハッピーエンドを迎えました。まずは完結してくれたことに感謝したいと思います。2人の本当の気持ちはプロローグでは暗示されただけでしたが、2人は自分の気持ちに正直に運命に抗い、見事「TRUE END」を手に入れました。戦争終結後、2人に本当の幸福が訪れることを祈らずにはいられません。
5、君に届け
連載12年のシリーズが30巻で感動のフィナーレを迎えました。爽子と風早の2人の関係の強さや人間的な成長、そして彼らを取り巻く友情の物語がきちんと収斂しての大団円。離れ離れになっても心はつながっている。あまりにも王道の胸キュン物語ですが、それを正面から描き切ったからこそ、この作品は大きな人気を得たのでしょう。