極私的回顧第7弾は歴史・時代小説の文庫です。毎度のお断りですが、テキスト作成のため各種ランキングおよびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。
2021極私的回顧その13 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
2020極私的回顧その13 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
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2018極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
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2016年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
【マイベスト5】
1、イクサガミ 天
西南戦争後の明治時代を舞台にした、士族たちによるデスゲーム小説です。腕自慢の剣士たちが、京都から東京にかけて東海道を渡りながら殺し合いを繰り広げていくという、いたってシンプルな物語。迫真の決闘描写が最大の見どころであり、三部作の開幕篇。今後に大いに期待しつつ、この作品を2022年の歴史・時代小説のベストワンに推します。
http://kodanshabunko.com/ikusagami
2、琉球建国記
15世紀の琉球を舞台に、建国直後の混乱・戦乱を描いた物語です。史実に比べるとかなり脚色されている感がありますが、血沸き肉躍るすがすがしい好漢たちの姿が非常に印象的です。史実に則ると物語の結末はやむを得ないのですが、感情移入していただけに泣けてくるものがありました。
3、大江戸あにまる
山本幸久が時代小説? とやや心配で読み始めましたが、しっかりとした時代考証と緻密な設定で堂に入ったもの。恐れ入りました。異国の動物を巡る群像短編集ですが、オランウータンだのワニだの当時の人々になじみのない動物が妖怪のごとくみなされ転がっていく様が痛快です。捕物としても十分面白く、楽しめました。
4、福猫屋シリーズ
江戸時代を舞台に、猫の保護、飼い主の斡旋、猫カフェの運営など、現代のペット事情にも通じるような猫のお世話、主人公と猫が暖かい縁を結ぶ物語です。猫のかわいらしさと周囲の人々の朗らかさが心地よい読後感。猫を飼うまで死ぬまで面倒を見る。江戸時代も現代も飼い主の責任というのは変わっていないようです。
5、吼えろ道真 大宰府の詩
大宰府に流され泣き暮らす菅原道真が、自身の才を用いて再び功と名を成す、ユーモラスな歴史小説。なんと8年ぶりの新刊です。道真の憎めないキャラクターと、考古学的な知見を駆使した緻密な考証はもちろん変わらず。「西の都」で起こる騒動と、市井の人々との交流。菅原道真が良くも悪くも等身大に描かれており、意外と大宰府での生活を楽しんでいたのではないかと錯覚してしまいます。
【とりあえず2021年総括】
毎年、同じことを書いていてすみませんが、文庫の時代小説はやはりストレスフリーに読みたいもの。2022年もそんな感じで、スカッとくるものやほっこりくるものが上位に来ました。新型コロナ対応ももう終わりに入りますので、2023年は現実のストレスが少しでも減ってくれるといいのですが。