otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

2021極私的回顧その13 歴史・時代(文庫)

 極私的回顧第13弾は歴史・時代小説の文庫です。毎度のお断りですが、テキスト作成のため各種ランキングおよびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。

2020極私的回顧その13 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2019極私的回顧その13 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2018極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2017年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2016年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

【マイベスト5】

1、くら姫 出直し神社たね銭貸し

 人生に行き詰った人たちに「たね銭」を預け、人々を不幸から救う「出直し神社」。この神社の手伝いをする主人公・おけいが、お参りに来た人たちのお店の立て直しを手伝う物語です。おけいの一生懸命さや明るさに心温まりつつ、謎解きとしてのミステリ的要素やファンタジー的要素もとりこみ、コンパクトにまとめた佳作です。お店に対する助言も無理のない範囲で、登場する和菓子や料理もおいしそう。2021年、極私的に癒し効果の最も大きかったこの作品をランキング1位に推します。

 

2、江戸彩り見立て帖 色にいでにけり

 過去、当回顧で取り上げたことのある〈居酒屋ぜんや〉シリーズの坂井希久子による新シリーズが始まりました。日本伝統の繊細な色使いを独特の色彩感覚で駆使する主人公。普段なじみのない和装の帯の彩の世界に引き込まれました。堂に入った心情描写も相変わらずの出来で、今後が楽しみなシリーズです。

 

3、あきない世傳 金と銀

 こちらも着物と色の蘊蓄がたっぷり出てくるシリーズですね。商いの世界で身を立てようとする主人公・幸。しかし、江戸時代の大坂では女性は商家の主人にはなれませんでした。様々な時代の壁や偏見にぶつかりながらも、幸が懸命に試練を乗り越える様が読者をひきつけます。身分や性別を超えた懸け橋となろうとする主人公の姿は、いまだジェンダー的な偏見に満ちた現代日本に対する証左にもなっています。

 

4、大江戸けったい長屋

 変人ばかりが住んでいることから「けったい長屋」と呼ばれる、しかし人情にあふれる長屋が舞台。長屋の住人たちが力を合わせて厄介ごとに立ち向かう、軽快な筆致の勧善懲悪ものです。やはり時代劇は定番の様式美をきちんと守ってナンボです。肩の力を抜いて楽しみましょう。

 

5、本所おけら長屋

 定番のシリーズですが、16巻ではいつもの人情噺にミステリ&サスペンスの要素も加えてきました。ご都合主義的に事件が収束するためミステリとしての評価はできませんが、そこは突っ込むだけ野暮というもの。個性豊かな長屋の面々の丁々発止のやり取りを楽しんでいればいいのです。

 

【とりあえず2021年総括】

 毎年、同じことを書いていてすみませんが、時代小説の文庫は仕事のストレス解消のために読んでいるため、やはり人情ものが中心。そして、今までできるだけ今まで取り上げていない作品を・・・と思ってセレクトしたら、こんな感じになりました。時代小説はやはりストレスフリーで気分を高めてくれてナンボ。ひたすらそんな1年でした。2022年はもう少し余裕をもって、冊数をしっかり読めたらいいんですが、難しそうですね・・・。私事ばかりですみません。