2019極私的回顧その13 歴史・時代(文庫)
極私的回顧第13弾は歴史・時代小説の文庫です。毎度のお断りですが、テキスト作成のため各種ランキングおよびamazonほか各種レビューを適宜参照しています。
2018極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
2017年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
2016年極私的回顧その7 歴史・時代(文庫) - otomeguの定点観測所(再開)
【マイベスト5】
1、嶽神伝 風花
2019のベストワンはこちらの忍者伝奇シリーズです。戦国時代の甲斐・信州を拠点に暗躍した山の者、戦国大名に使える忍び者たちを描いたシリーズです。武田・上杉・徳川・北条など戦国大名たちがせめぎあう中、時に敵同士、時に味方同士となって攻防を繰り広げる、忍びたちの義と戦いの物語です。戦闘シーンの臨場感が抜群で、今回も素晴らしい出来でした。
2、小間もの丸藤看板姉妹
対照的な性格の姉妹が、閑古鳥の鳴く小間物屋を継いで、お店を盛り立てていく物語です。様々なアイデアを出し、周囲の人の助けを得ながら徐々にお店が立ち直っていく過程が面白いです。また、年頃の娘として恋愛やら縁談やら、お店や自分の将来について思い悩む姿も瑞々しく描かれています。
3、居酒屋ぜんや
2017年の極私的回顧でも取り上げた作品ですが、相変わらずの「飯テロ」な料理の描写と繊細な心情描写に引き込まれ、2019年もランクインさせました。甲斐性のない男を優しく包みつつ諭してくれるおかみの姿は、普段酒場で愚痴をこぼしている自分の身にもつまされるようで、親近感がありました。ここは日本酒で一杯やりましょう。
4、よろず屋お市 深川事件帖
ハヤカワ時代ミステリ文庫の発刊は、2019年のミステリおよび時代小説のトピックの一つでした。その中で一番評価できると思った作品がこちらです。時代小説として見ると江戸の私立探偵「よろず屋」を継いだ女性主人公を描いた捕物帳の佳作ですが、ミステリ的な完成度は平板なのでハードボイルドとして楽しむのがいいでしょう。
5、貧乏神あんど福の神
貧乏絵師が主人公の捕物帳です。ダジャレ満載の田中節は相変わらず健在で、人を食ったようなキャラ造型もいつも通りです。すっとぼけたテイストながらテンポの良い人情物として楽しめました。シリーズ化されるようなので次巻も楽しみです。
【とりあえず2019年総括】
文庫の時代小説を読むときは極力批評眼を入れず、純粋に楽しめた作品を入れるようにしているのですが、2019年は仕事のストレスや疲れをもろもろ抱え込んだためか、人情物中心のラインナップになりました。やはり江戸市中をぶらぶらするのはいいリラックスになりますね。
歴史・時代ミステリについては、めぼしい作品はいくつかありました。しかし、核となる謎解き部分が、捕物帳として時代小説の側面から見れば及第点でも、ミステリとして完成度の高い作品はなかった気がします。2020年はミステリとしても完成度の高い歴史・時代ミステリを読みたいものです。