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2017SFセミナーレポート③ シミズ・ドリーム 海洋未来都市プロジェクト

 続いては、清水建設の「海洋未来都市プロジェクト」についてのレポートです。SFというよりはサイエンスカフェのようなパネルでした。

 【関連リンク】

Top Page - SF SEMINAR

シミズ・ドリーム−清水建設

GREEN FLOAT/シミズ・ドリーム−清水建設

http://www.shimz.co.jp/theme/dream/pdf/greenfloat.pdf

OCEAN SPIRAL/シミズ・ドリーム−清水建設

http://www.shimz.co.jp/theme/dream/pdf/oceanspiral.pdf

 

【海上都市】

 SFセミナーではいつも科学技術に関するパネルがありますが、過去に見た中では最もサイエンスカフェ的な雰囲気のパネルでした(悪い意味ではありませんよ!)。そのため、SFファンではなく、一科学ファンの目線で話を聞いていました。また、合宿企画の方にもお邪魔しました。

 上記リンクから清水建設のHPにアクセスしていただいた方が内容理解としては早いと思いますが、パンフレットに載っていなかった話題などに触れながら、かいつまんでまとめてみたいと思います。

 海上に浮体都市を造ることは、すでにオランダなどで住宅が海に浮いているなどしていて、技術的には実用段階に入っているそうです。

オランダ、アムステルダムでMVRDVの集合住宅「オクラホマ」「シロダム」(外観だけ)を訪ねる。 | oh! my ブログ

海の上の家(オランダ) 浮かぶ建築 | 桜山建築設計NEWS

 キリバスなど南太平洋の国は、海面上昇で国そのものがなくなりかねないので、プロジェクトに強い関心を示しているそうです。

海面上昇で国が水没する? 南太平洋のツバルやキリバス | THE PAGE(ザ・ページ)

キリバス 海面上昇危機の実像 | 日経サイエンス

キリバス - Wikipedia

 海上に浮遊する都市は沖合にあれば津波や高潮に強く、また赤道付近に浮遊させておけば台風の影響もほとんど受けないそうです。二酸化炭素削減についても、へたな省エネ策をずるずる続けるよりも、都市の構造そのものを変えて都市の中に炭素循環を組み込むことで二酸化炭素の排出を半分以下にできるので、海上都市は効果的だそうです。水や食べ物、電気などについても全て自給自足できるので、極めてエネルギー効率のいい都市になるそうです。また、資源については太平洋ゴミベルトを活用できるそうなので、資源の問題もクリア―できます。こうして聞くといいことばかりですねえ。従来の都市の概念の外装である工業・情報都市ではなく、植物的な生産者の上部・下部構造を積載した伝統都市です。確かに斬新な都市の概念だと思います。

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目を覆いたくなる…太平洋ゴミベルトのあまりに醜い現実 - NAVER まとめ

太平洋ゴミベルト - Wikipedia

 合宿企画では都市の住人のメンタルの問題、都市の社会階層の問題など、社会科学的な質問も出ていました。しかし、この辺りはまだ考察が進んでいないというか、そもそも都市自体がまだ造られていないので、研究は手探りの状態のようでした。カジノや軍事利用というアイデアもあるそうですが、やはり平和利用に徹してほしい気がします。

 海上都市に向けての具体的な建設計画は、既にコンパクトな構造物が進行しているそうなので、非常に楽しみですね。

 

【海底都市】

 海上都市をさらに進め、深海を利用して人間を巨樹させるのが海底都市です。こちらも技術的には既に実現可能だそうです。

 深海に居住すると、エネルギーや水や資源などが難問になるような気がします。しかし、電気は海面と深海の温度差で発電し、むしろ海底都市から輸出するほどになるそうです。水は海面と深海の圧力差で海水を淡水化することでまかないます。さらに、都市から排出する二酸化炭素については、海底のバクテリアを用いて二酸化炭素からメタンを製造してエネルギーを生産し、炭素循環を資源として活用することで、二酸化炭素排出が生産性のあるサイクルに組み込まれます。自給自足の機能や観念については海上都市よりもさらに先進的ですね。

メタン菌 - Wikipedia

メタン生成酵素の親類がメタンを分解−海底の微生物層の酵素を結晶化し、立体構造を解明−

地下微生物がCO2を還元してメタン鉱床を再生し、地下カーボンリサイクルを実現します。

http://geochem.jp/journal_j/contents/pdf/44-4-137.pdf

 合宿企画では、海上都市と同じく、海底都市という特殊状況における都市の住人のメンタルについての質問が出ていました。改定という特殊な環境で一生を過ごすというのは難しいかもしれないので、定期的に住人の入れ替えがあるかもしれないとのことでした。こういう問題は実際に都市が造られてみないと何とも言えないでしょうね。

 また、フジツボなどの生物が付着しないのかという質問については、フジツボに特殊な波長の光を当てることで付着を回避できるとのことでした。調べてみたら、既に特許取得済みの技術でした。いろいろ興味深いものがありますねえ。

Patent WO2015145527A1 - 光照射によって翼形類およびフジツボ類を殺す方法 - Google Patents