2018SFセミナーレポートその7 《ナイトランド叢書》と《ドラキュラ紀元》の部屋
ようやくGWの終了です。かなり遅ればせになってしまいましたが、SFセミナーレポートのラストは《ナイトランド叢書》と《ドラキュラ紀元》の部屋、いつもお世話になっております、アトリエサードの皆さんと岡和田晃さんの企画でした。
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【ドラキュラ紀元】
まずは《ドラキュラ紀元》復活からいきます。
ここ数年予告されていた〈ドラキュラ紀元〉が、ついに復活刊行開始と相成りました。かつてあの世界に耽溺した人間としては、感謝しかないです。SFセミナーで先行発売していたので、さっそくゲットしました。
かつての東京創元文庫版の改訳という扱いですが、
- 作者: キムニューマン,Kim Newman,梶元靖子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1995/06
- メディア: 文庫
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訳がかなり改良されて読みやすくなっているうえ、いくつかのボーナストラックがついていますので、事実上の新刊といってよく、書籍単体としての価値はアトリエサード版のほうが上です。企画での岡和田さんのコメントを拝借しながらレビューしますが、古今東西の吸血鬼が一堂に会するスターシステム、切り裂きジャック事件にまつわる偽史的言説、ノンフィクションとフィクションの境界をいくメタ的な叙述、制度的なミステリとしての構造、ヴィクトリア朝の雰囲気やガジェットなど、さまざまな要素が詰め込まれた傑作です。いくらでも深読みできる重層な作品ですが、疾走するプロットと物語を追うだけでも十分に楽しめます。怪奇幻想の歴史に残る傑作の帰還に、大いに祝杯を挙げましょう。
【ワインよりクラフトビールのほうが1巻の雰囲気には合うなあ】
ブリュードッグ ドッグC インペリアルスタウト 330ml クラフトビール
- 出版社/メーカー: BrewDog Brewery(ブリュードッグ ブルワリー)
- メディア: Wine
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SF・幻想文学・ファンタジー・ミステリ・ホラーの各ジャンル小説ファンだけでなく、TRPGファンなどにもお勧めできる作品です。四の五のいわずに買いましょう。
アトリエサードの岩田さんや牧原さんによると、1~3巻まではかつての東京創元文庫版をもとにした改訳ですが、4巻からは完全な新訳になるとのことです。翻訳の梶元靖子さんのスケジュールは既に押さえてあるそうで、3巻までは年内に、4巻を年明けに出す予定だそうです。 4巻まではとりあえず出すことが決まっていますが、5巻以降については売れ行き次第だそうです。怪奇幻想の徒としては買い支える義務がありますね。
- 作者: キムニューマン,Kim Newman,梶元靖子
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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ちなみに、英語では既に5巻まで出ています。
【4巻】
【5巻】
Anno Dracula: One Thousand Monsters
- 作者: Kim Newman,William Gaminara
- 出版社/メーカー: Audible Studios on Brilliance audio
- 発売日: 2018/02/13
- メディア: MP3 CD
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4巻ではウォーホルやコッポラなどが登場し、スターシステムのカオスがさらに進行します。また、5巻の表紙には富士山が描かれていますが、5巻は明治時代の横浜にイギリスからヴァンパイアが上陸するという、似非ジャポニズムに満ちた痛快作です。巻を追うごとにテンションと奇天烈さの度が増していくのが素晴らしいですね。6巻はサイバーパンクになるかもしれないとのことですが、是非もっと羽目を外していただきましょう。
【《ナイトランド》と〈ナイトランド叢書〉】
さて、続きましては、当ブログで毎年取り上げております《ナイトランド》と〈ナイトランド叢書〉です。《ナイトランド》復活の経緯については、上記リンクの昨年・一昨年のレポートを読んでください。《ナイトランド》最新号は、〈ドラキュラ紀元〉刊行に合わせた切り裂きジャック特集だそうです。
切り裂きジャックについては、岡和田さんが熱く語っていました。切り裂きジャックといえば、ヴィクトリア朝の帝国主義を破壊した、時代を象徴する事件です。これまで無数の切り裂きジャック研究が出ており、浅学ながら私も何冊か読んでいますが、岡和田さんの話の通り、私が読んだ中でまともだったのはこれくらいだったと思います。
細部にこだわった切り裂きジャック研究はたくさんあります。しかし、どいつもこいつも過剰に細部にこだわるくせに、仮説の根本がおかしいことに気づきません。明らかな矛盾や齟齬を放置したままにするので、フィクションとノンフィクションの境界である偽史になってしまうのです。怪しげなものを楽しむのもオカルトの醍醐味の1つですが。まあ、ジャックの正体は永遠に謎のままがいいのかもしれません。
〈ナイトランド叢書〉は現在第3期に入っていますが、第3期でこれまでに刊行されているのは次の通りです。
そして、第2期で予告されていますがまだ刊行されていないのがこちらで、
『紫の雲』M・P・シール
『ジョン・サーストンの事件簿』M・W・ウェルマン
第3期で予告されているラインナップがこちらです。
『魔術師の帝国3 アヴェロワーニュ篇』クラーク・アシュトン・スミス
『古き魔術』アルジャーノン・ブラックウッド
『フラックスマン・ロウの心霊研究』E&H・ヘロン
『白蛇の巣』ブラム・ストーカー
『メデューサ』E・H・ヴィシャック
『セイレーンの歌/ルクンド』エドワード・ルーカス・ホワイト
去年も書きましたが、怪奇幻想の徒にとっては極上のラインナップです。今年に入ってやや刊行ペースがやや遅れ気味になっている気がしますが、まだ刊行中止にはならないそうです。しっかりコンスタントに刊行してくださいね。
さて、昨年のSFセミナーや『SFが読みたい!』で予告されて以来、こちらの続報が途絶えていますが、
Stand On Zanzibar (S.F. MASTERWORKS) (English Edition)
- 作者: John Brunner
- 出版社/メーカー: Gateway
- 発売日: 2013/06/24
- メディア: Kindle版
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岩田さんは「絶対出す!」という話でした。翻訳は大変でしょうが、読者としては引き続き待ちますので、できれば早くに刊行してください。
また、SFセミナーの前に発売になったこちらについてですが、
- 作者: グレアム・ボトリー,スティーブ・ジャクソン,イアン・リビングストン
- 出版社/メーカー: 書苑新社
- 発売日: 2018/04/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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安田均さんがどうしても4月27日という発売日にこだわったそうです。そこで、発売日に間に合わせるため、岩田さんがビニール梱包を行う会社にガンガン電話を入れて、無理を押して作業してもらったそうです。私も買いましたけど、いろいろ苦労があるんですねえ。できれば久しぶりにタイタン世界でTRPGをしたいところですが、多忙のため時間がなさそうです。なんともったいない・・・。6月下旬には『タイタン ファイティング・ファンタジーの世界』も復活するそうなので、こちらも楽しみですね。
タイタン?ファイティング・ファンタジーの世界 (背景世界資料集)
- 作者: M.ガスコイン,安田均,マーク・ガスコイン
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1990/01
- メディア: 文庫
- クリック: 8回
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今年は多忙のため非常に遅くなってしまいましたが、これにてSFセミナーのレポートを終了させていただきます。セミナーでお相手してくださった方々に改めてお礼申し上げます。今年はSF関連のイベントにもう顔を出す余裕がなさそうですが、またどこかでお会いする機会があれば、よろしくお願いします。