otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

2018極私的回顧《スポーツ》① マラソン・長距離(男子)

 では、今年度の極私的回顧を開始します。まずは、スポーツ系およびライトノベルからといういつもの流れですね。既報の通りで、いつもながらの遅ればせで恐縮ですが、福岡国際マラソンで14年ぶりの日本人の優勝者が出た男子マラソンから参りましょう。

otomegu06.hateblo.jp
otomegu06.hateblo.jp

 【2018福岡国際マラソン

www.youtube.com

福岡マラソン | 大会結果・記録

新星・服部勇馬は「大迫の脅威に」と瀬古リーダー 男子マラソン復活確信「本物」/スポーツ/デイリースポーツ online

設楽悠太4位…前半で水取れず、後輩に「ちょうだい」/スポーツ/デイリースポーツ online

川内優輝は猛追10位、来年プロ転向も東京五輪は無視?「僕にはユージーンがある」/スポーツ/デイリースポーツ online

 2016年の川内、2017年の大迫と近年好走が続き、そろそろ日本人の優勝をと思っていましたが、服部勇馬がやってくれました。今や福岡はローカルマラソンの一つに過ぎませんが、それでもやはり日本マラソンにとって伝統の福岡で日本人が優勝することの意味は大きいです。コンディションを考えるとできれば6分台に乗せてほしかったですし(ペースメーカーの設定が日本選手向けのぬるいものなので仕方ないですが)、終盤の14分40秒台のスパートももっと上げられたのではないかという印象がありますが、とにかく勝ったことが大きいです。それにしても尾方の優勝がもう14年前ですか。そんなに日本勢が優勝から遠ざかっていたんですね。陸連と瀬古の相変わらずの浮かれコメントを聞いていると辟易し、いらぬ心配もしてしまいますが、今日は素直に祝杯を挙げたいと思います。

福岡国際マラソン プレーバック|第58回(2004)

 設楽と川内は現在の調子を考えればこんなものでしょう。二人とも何とかレースの形は作りました。それでも設楽はサブテンにはまとめてほしかったところですが。心配なのは神野大地です。こうも腹痛連発だとメンタルとしか思えません。力のない選手ではないので、まずはゴールドコーストなどのプレッシャーのかからないレースでサブテンを狙ってみるのがいいかもしれません。

腹痛に苦しむ“山の神”神野大地 再び発症で29位「意識しないようにしてた。けど…」/スポーツ/デイリースポーツ online

 

【男子マラソン復権の2018年】

 では、今年の男子マラソン・長距離の総括に参りましょう。2018年は最高の姿と最低の姿が交錯した1年になりました。まず最高の姿は、当然ながら復権の光を大いに輝かせた男子マラソンです。東京マラソンの設楽の日本記録更新に始まり、川内のボストン優勝、井上のアジア大会金メダル、大迫のシカゴでの日本記録更新、服部勇馬の福岡優勝と、近年の低迷を吹き飛ばす朗報が続きました。ファンとしては積年の鬱憤が晴らされた感で、マラソン観戦の醍醐味を大いに味わうことができた1年でした。同世代の選手たちが刺激し合い、好循環が形成されています。

2018東京マラソン⇒この程度のことでガタガタ騒ぐな - otomeguの定点観測所(再開)

2018ボストンマラソン 川内優輝優勝! - otomeguの定点観測所(再開)

2018春マラソンまとめ⇒あえてネガティブに語ってみた - otomeguの定点観測所(再開)

2018アジア大会 男子マラソン・長距離 - otomeguの定点観測所(再開)

大迫、シカゴで2時間5分50秒⇒騒ぐほどのことではない - otomeguの定点観測所(再開)

 当ブログでは駅伝、特に箱根駅伝について散々ネガティブなことを書いてきました。しかし、本来の理想形は、駅伝を踏み台にしてマラソンに進むという流れがきちんと確立されることです。21世紀に入り、駅伝、特に箱根駅伝が盛り上がることで、駅伝を競技生活の目標とする誤ったサイクルが形成されてしまい、男子マラソンが長らく低迷しました。そして箱根駅伝弊害論が叫ばれるようになりました。当ブログも散々駅伝は有害であると叫んできました。しかし、駅伝の存在そのものが有害なのではなく、本来はエキシビジョンに過ぎない駅伝を競技の中心に据えるという、転倒したあり方が問題だったのです。そもそも箱根駅伝は世界で戦うマラソン選手を輩出するために始まったものであり、マラソンに向けた通過点に過ぎません。手段と目的を取り違えた21世紀の競技者たちを見ながら、金栗翁は「何が金栗杯だ」「何が山の神だ」とさぞやお怒りだったことでしょう。今年、箱根駅伝出身者たちがマラソンで次々に結果を出したことで、ようやく箱根駅伝および駅伝が本来の立ち位置に戻ってきました。金栗翁も今年の男子の健闘を大いに褒めてくださるのではないでしょうか。

金栗四三 - Wikipedia

 世界に目を向けると、男子マラソンはついに2時間1分台の世界に突入しました。

2018ベルリンマラソン⇒異次元・2時間1分台 - otomeguの定点観測所(再開)

 日本記録との差を考えると絶望的な気分になってしまいますが、キプチョゲが1人飛び抜けているのが現在の男子マラソンの状況です。キプチョゲは規格外だとしても、他のケニアエチオピア勢なら日本選手でも十分に勝負できるということは分かったはずです。まあ、ベケレやファラーも別格かもしれませんが・・・。

エリウド・キプチョゲ - Wikipedia

ケネニサ・ベケレ - Wikipedia

モハメド・ファラー - Wikipedia

 東京五輪に向けて日本男子が世界と戦う橋頭堡を作った2018年、という総括にしたいと思います。願わくば、この流れが2019年も止まることなく東京五輪までいってほしいものです。次は来年の東京マラソンですね。是非、日本記録の更なる更新を期待しましょう。極私的にはMGCはやはりやめたほうがいいと思うのですが、もうそれを言っても栓ないので控えます。

マラソングランドチャンピオンシップ決定・・・ - otomeguの定点観測所(再開)

 

【壊滅的な男子長距離】

 ここからはネガティブなテキストになります。光が見えた男子マラソンに対し、男子トラックの長距離は2018年も最低の状況でした。

2018陸上・日本選手権1日目 - otomeguの定点観測所(再開)

2018・陸上日本選手権 3日目 - otomeguの定点観測所(再開)

2018ジャカルタアジア大会・陸上代表 - otomeguの定点観測所(再開)

2018アジア大会 男子マラソン・長距離 - otomeguの定点観測所(再開)

2018アジア大会 男子3000mSC - otomeguの定点観測所(再開)

 塩尻和也が3000mSCでアジア大会で銅メダルに踏ん張り、全面倒壊を何とか食い止めてくれました。でも、他の選手、特に腑抜けた実業団勢は何をやっていたのでしょうか。2018年はトラックの長距離の空洞化がさらに進行した1年となってしまいました。歴史的凡戦だった日本選手権の10000m・5000mがその象徴だといえるでしょう。特に5000mのタイムに至っては昭和37年以来の14分20秒台という体たらくでした。当然、昨年の世界陸上に続いて今年のアジア大会も、10000m・5000mについては選手の派遣が見送られました。アジア大会の男子長距離は、かつては日本男子のお家芸として金メダルをバシバシとっていた種目のはずなんですが。

 残念ながら、マラソンの好循環はトラックに一切波及しませんでした。「マラソン重視」といえば聞こえはいいですが、要するにみんなでトラックから逃げ回っているだけです。マラソン・長距離の土台が音を立てて崩れています。大迫がマラソンに回るとすれば、東京五輪で5000m・10000mの代表になれる選手はいません。現在の日本選手には、世界と戦う舞台に上がる力も意欲もありません。そして、この危機的状況を憂う声はほとんど聞こえてきません。何だ、この危機感のなさは。地元開催の五輪なのに出場選手なしという大恥を晒すつもりなのでしょうか。まずは来年のドーハ世界陸上の5000mと10000mに何が何でも選手を派遣すること。東京五輪後まで見据えて男子長距離・マラソンの将来を考えるなら、これは優先度の高い目標のはずです。

 少しはポジティブに考えましょう。実業団のベテラン勢が腑抜けているのですから、若手にとっては台頭するチャンスです。箱根駅伝ニューイヤー駅伝に10000m27分台の若い選手たちが集って、切磋琢磨の中からドーハ世界陸上東京五輪を目指す新星が生まれてくることを切に願います。

阿部弘輝選手紹介 箱根駅伝予選会世代トップの明治大学が誇る超万能ルーキー | 駅伝マラソン.com