2017横浜トリエンナーレ
先日閉幕した横浜トリエンナーレですが、閉幕間際にようやく行くことができました。いつもながらの遅ればせですが、レポを挙げてみたいと思います。
【パイオニア的存在として】
http://www.yokohamatriennale.jp/2017/
今でこそ日本各地でビエンナーレ・トリエンナーレが開催されるのが当たり前になり、失敗例も成功例も見られるようになりましたが、日本において地域芸術祭・国際芸術祭を行ってアートを発信する試みは、そもそも横浜トリエンナーレがパイオニアとなって牽引してきたものです。そのため、ヨコトリには他の芸術祭よりも高い水準が求められてしまうので、プレッシャーも相当なものだと思います。そして、様々な趣向を凝らしてそのハードルを越えてきたのがヨコトリであるといえるでしょう。
今回のヨコトリは、『島と星座とガラパゴス』という、一見曖昧で拡散的なコンセプトでした。実際、展示にこれまでのような統一されたテーマ性が見られず、全体にケイオティックな印象がありました。しかし、あえてコンセプトを統合することなく、独自の展示やプロジェクトが各々のコンセプトを発信することで全体として星座を描く、というのが今回のヨコトリの目論見だったそうです。ですから、展示から得たケイオティックな印象は、主催者側の意図がうまく機能していたという証左なのでしょう。今回も大いに楽しめる好展示でした。
では、ジョコ・アヴィアントの注連縄オブジェをくぐり、印象に残った展示を、散発的ですがいくつか記していきます。
【開幕まであと16日】横浜美術館会場内グランドギャラリーではジョコ・アヴィアントがインドネシアから届いた2千本の竹を編み上げています。この大きな作品が横浜美術館館内で一番最初に皆さまをお迎えします。#ヨコトリ #yokotori #ジョコ・アヴィアント #JokoAVIANTO pic.twitter.com/WgVYYCkpsH
— 横浜トリエンナーレ (@yokotori_) 2017年7月19日
IndoArtNow | Artists | Joko Dwi Avianto
【Mr.】
さて、まずはこの人に反応しないといけません。このブログでは今さら紹介するまでもないと思われる、村上隆の高弟にしてカイカイキキ所属の、萌え絵アートの第一人者です。キューパってどこやねん。オタク的なコンテンツをアートに結晶させているといえば聞こえがいいですが、根底にあるのはただのオタクでありロリコンの魂です。それゆえに私とは強くシンクロするわけですが。住宅地の街角を歩く少女たちがアニメのアイコンを経由して、多層的なアートとして昇華化されています。・・・要するに孤独なオタクなおっさんが妄想を満喫しているということです。ヘタウマなロリ絵といってはいけません。
興味深かったのは展示されている絵画やオブジェよりも、壁にずらりと張られた創作メモ(??)。『化物語』『まどマギ』など最近の作品だけでなく『リヴァイアス』など懐かしの作品までも参照されていて、しかも18禁作品の臭いまで漂ってくる濃厚さ。さすがです。クールジャパン万歳。世も末ですね。
Mr.(ミスター)作品画像コレクション[萌え絵1200万円!?] - NAVER まとめ
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Mr.「日本のオタク文化を現代美術で表現」 - 山田視覚芸術研究室 / 近代美術と現代美術の大事典
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【ケイティ・パターソン】
彼女の作品のテーマは普遍であり永遠です。生物・化石・星・年輪などモチーフは様々ですが、生物学・天文学・地質学などのサイエンスへの視座を駆使しながら、そこに自然の有する普遍性や悠久の観測時間などを表現しています。作品自体は極めてシンプルであり、力強く人間と自然のつながりを表現しています。
というか、要するに相当なマニアであり、マニアならではのこだわりを作品に嬉々としてぶち込んでいるという気がします。《すべての死んだ星》にはニュースソースでほとんど取り上げられていないような星まで配置されていますし、《化石のネックレス》にはほぼ全時代かつあらゆる形態の動物と化石が(進化史的に正しいかどうかは怪しいですが)網羅的に配置されていて、マイナーな生物群までカバーされていますし。観る側もいろいろ勉強しなくちゃいけないということですかね。
芸術係数blog » ケイティ・パターソン「地球―月―地球(月面に反射した「月光」ソナタ)」
100年後の読者に、100人の作家が物語を贈るプロジェクト「Future Library」|WIRED.jp
あなたは読めないが、100年後の人々は読める本 · Global Voices 日本語
Katie Paterson (@ktmpaterson) | Twitter
【柳幸典】
横浜開港記念館の地下で行われていた展示です。地下にこんな空間があったということにちょっとびっくりしました。砂絵として崩れゆく国旗、ゴジラ、憲法9条、核実験、核融合の太陽などを薄暗がりの中に並べるという、シンプルでわかりやすいメッセージ。重厚で批評性の高いアートであり、日本の今を問うという政治性を帯びた作品ですが、どうしてもイノセントに過ぎると感じてしまうのは、社会科学的なうがった視座なのか、私が現実主義にまみれてしまっているのか・・・。
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【トビケラ】
なんと幾何学的でケイオティックで美しい。今回、一番感動したのは人間の作品ではなくて昆虫の巣でした。人間の小賢しい造形など、自然の造形の美しさには及ぶべくもないということですね。
トビケラ専科 Japanese Trichoptera(画像元)
http://yokohamatriennale.jp/2017/blog/2017/05/blog-2017-1.html
http://yokohamatriennale.jp/2017/blog/2017/05/blog-2017-2.html