『MANGA都市TOKYO』展短評
今回のレビューは国立新美術館で開幕した『MANGA都市TOKYO』展です。
「東京」テーマにカルチャー集結 「MANGA都市TOKYO」開催
8/12開幕『MANGA都市TOKYO』展(六本木・国立新美術館)PR映像
エヴァンゲリオンやゴジラ、戦闘で破壊されてきた東京を1/1000スケールで再現!MANGA都市TOKYO プレス内覧会
MANGA都市TOKYO【公式】 (@manga_toshi_tyo) | Twitter
パリからの凱旋展示ということで話題になっていたので早速行ってみました。結論から言えば、アニメ・コミック・ゲームなどのオタク文化的視点で見れば至福の展示。しかし、アートの視座で見れば強度の低い作品が並んだ展示。もっと言ってしまえば、図録の森川嘉一郎の論考を読めばコンセプト理解には事足りるので、知的刺激という点では現地にいかなくても十分でした。
月並みなオタクの視座で見ると至福の展示でした。フィクションと現実を行き交う東京のリアリティ、1980年代から東京の変化を体感してきた世代としては、当時から現在までの代表的なアニメ・コミックが乱れ撃たれ、背景としての東京の情景がちりばめられているのは、なんとも感涙ものです。作品の配置は的確で、キュレーターもまた長年のオタクであることが分かります。また、過去の作品と東京の点景を重ね合わせることで、今や急速に斜陽を迎えている東京及び日本という国に、華やかな時代があったことが思い起こされます。私も聖地は何か所も訪ねていますが、『ラブライブ』の神田明神とか『こち亀』の亀有とか(そもそも国立新美術館が『君の名は。』の聖地です)、幾層にも重なる表象の中に没する快楽を味わいながら、オタクでよかった・・・、SFファンでよかった・・・としみじみ思いました。
視座を変えます。日本のコミック・アニメ、ひいてはオタク文化はアートとして高い強度を有している、という誤った観念にとらわれていませんか。この展覧会はパリで好評だったそうですが、それはアニメやコミックを記号的消費から切り離したアートの表象として冷静に評価した上でのものなのでしょうか。アートの視座でとらえると、今回の展示に特に評価する点は見出せませんでした。既存のパッケージをつぎはぎした空間には、記号的消費の意味合いはあっても芸術性はありません。そもそも、私は、商業流通しているアニメ・コミックのほとんどにアートとしての価値を見出していない、頭の固い人間なので、記号群が並ぶだけの展示からは知的刺激を受けませんでした。本来対抗文化であるアニメ・コミックが芸術として虚飾をまとう姿は健全とは思えません。そして、新国立美術館が展示の場としてふさわしいとも思えません。秋葉原は池袋などのもっとジャンクな場で開陳する方が、記号群に対してむしろ敬意を払うことになると考えるのは、やはりうがった見方なんでしょうねえ。