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『それまでの明日』短評

 また遅ればせですね。既にいくつも書評が上がっている、原尞の14年ぶりの第5長編です。雑駁ですがレビューしてみます。

  

それまでの明日

それまでの明日

 

『それまでの明日』 原 りょう著 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

それまでの明日 感想 原 りょう - 読書メーター

『それまでの明日』(原りょう)の感想(9レビュー) - ブクログ

14年ぶりに“帰ってきた”名探偵 国産ハードボイルド最高峰 | レビュー | Book Bang -ブックバン-

原尞「それまでの明日」 - ひとやすみ読書日記(第二版)

 なんぼでも貼れますが、とりあえずこれくらいで。既に絶賛の声が各所から上がっていますが、私の感想も絶賛です。上記のリンク先の大森望さんと同じようなコメントですが、これぞ国産ハードボイルドの最高点。14年待った甲斐があるというものです。久しぶりの沢崎との邂逅に、肩に力を入れて読み始めましたが、始まってしまえば何のことはない、いつもの原・ハードボイルドの世界でした。飲み屋で昔の友人に会うような気楽さで物語に入っていけるのは僥倖でした。探偵・沢崎の帰還に大いに祝杯を挙げました。というか、本当にワインを飲みながら読んでいたので・・・。 

  

アンガス ブリュット

アンガス ブリュット

 

 作者が物語に向き合う真摯な姿勢と研ぎ澄まされた文章は、まさに好みのワインを味わっているかのような極上の快楽でした。本格ミステリではありませんが、精妙な論理構造は本格ミステリファンも納得させる出来栄えでした。この後によほどの作品がこない限り、2018年のベストワンはこれで決まりでしょう。この作品をけなすようなガキは今後一切ハードボイルドを読まなくてよろしい。

 不満点が1つあるとすれば、とにかく刊行ペースが遅いこと。次作の構想は既にあるそうですから、次はせめて数年で出してほしいと切に願います。