『アンドロメダ病原体-変異-』短評
先月早川書房より発売されたコロナ禍のために話題になっていた作品を読んでみたので、ざっくりと感想をまとめてみます。
マイクル・クライトンの『アンドロメダ病原体』の続編と銘打たれた作品で、たまたまでしょうがコロナ禍とタイミングが重なり、WEB上などでも話題になっていたようです。
アメリカでの評判がいまいちだったようですが、残念ながらやはりクライトンと比べると数段劣るという印象です。上巻は正統派の冒険小説の構成で、下巻は一気にテンポアップするジェットコースターノベル。きっちり伏線を回収してそつのないスリラーとして仕上がっていますが、残念ながらそこまでの評価です。時流に乗った感があるとはいえSFとして目新しい素材は出てこないし、冒険小説としてもクライトンのような迫力とリーダビリティを期待してしまうと格落ちする作品でしょう。映画化を意識しているのか、映像的な描写はクライトンを上回っていますが。
とはいえ、これはあくまでクライトンとの比較です。前作の色眼鏡を除いてこの作品単体として評価すれば水準作の冒険小説でありスリラーとして評価できる作品なので、興味があるならという感じですかね。SFとしてはランク外です(まあ、そもそも私はクライトンを冒険小説・エンタテイメント作家として評価しており、SF作家としては優れていると思っていませんが)。でも、やはりクライトンとの比較を前提とした続編なので、厳しいコメントにせざるを得ません。