『三体Ⅱ 黒暗森林』短評
本日発売ですね。恐らくこれから無数の批評や感想の言説が飛び交うことになると思いますが、さっそく読了したので簡単な感想をあげておきます。
まず結論から。前巻よりスケールアップした傑作であり、本年度はおろか世界SFにおけるオール・タイム・ベストの1つ。大部の作品ですが英文と比較しても訳文が読みやすく高いリーダビリティでぐいぐいいけました。非常に面白いです。
極力ネタバレを避けるため、抽象的に褒めちぎります。すみません。
ポスト・ヒューマンを射程に入れた思弁的実在論などの現代哲学の批評に堪えうる高い完成度のスペキュレイティヴ・フィクションであり、現代中国およびアジアおよび世界の状況を鋭利にカリカチュアした政治小説であり、中国の風俗を写し取った社会的な小説であり、中国史及び世界史及び人類史を巧みに逆照射した歴史小説的な側面もあり、ミステリファンが読んでも楽しめるような巧妙な事件及びプロットの配置があり、人類社会についての経済的な問いかけをマルサスのごとく行った経済小説であり、稀有壮大な奇想とガジェットと大ぼらをこれでもかこれでもかと惜しみなく投入したワイド・スクリーン・バロックのごとくスケールの大きなSFであり・・・。とにかくこれから様々な言い方で批評されると思いますが、多種多様な側面を有する襞の深い作品です。何を言っても陳腐なコメントになりますね。読んでください。
この後、第3部は引き続き壮大でとんでもないことになるんですが、ネタバレは避けて翻訳を待ってください、というのが適切でしょう。