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『忘却城 炎龍の宝玉』短評

 今回のレビューは東京創元社から先月発売された文庫のファンタジーのレビューになります。

  

忘却城 炎龍の宝玉 (創元推理文庫)

忘却城 炎龍の宝玉 (創元推理文庫)

 

  井辻朱美と作者のあとがき含めて「ディテール地獄」「ポストモダン的」「アットホーム」「グロテスク」ですか。さらに作者あとがきに載っていた「情報過多!」「読みづらい!」「漢字が多すぎ!」との言葉を並べておけばこのシリーズに関するコメントは終了ですね。お疲れ様でした。<(_ _)>

http://www.webmysteries.jp/archives/23005809.html

 ・・・これだとレビューにならないので続けましょう。シリーズ3作目は金魚小僧のお話。子供が主人公なので、ある意味シリーズで最も感情移入しやすかった作品ですね。金魚小僧が友と親の熱い情念を受け止めて成長していく物語。お互い間違っていると思っていても振り切ることのできない切なさが読者の胸を熱くします。金魚小僧が苦悩しながら成長していく姿や、儒艮と金魚小僧という不器用な二人が起こす妙な化学反応は読んでいて微笑ましいものがあります。最後は愛の告白みたいでグッとくるシーンもありましたが、・・・これ以上はネタバレが過ぎるのでやめときましょう。

 3作目にしてシリーズとして安定感が出てきた感じですね。世界が大きく広がったので、まだまだ書くことは山積みのはず。和製アダルト・ファンタジーの作家は層が薄いので、鈴森琴は貴重な戦力。とにかく踏ん張ってシリーズを続けてほしいです。