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otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・文化評論・思想・社会科・国語表現・性文化・スポーツ観戦・科学・飲み食い・与太話 【一部、性的に過激で頭のおかしな記事があります】

2016日本SF大会 いせしまこんレポート②~不健全図書50周年記念企画「都が選ぶこのエロマンガがエロい! 50th」~

 では、いせしまこん企画レポート第1弾です。今回は、「不健全図書50周年記念企画『都が選ぶこのエロマンガがエロい! 50th』」についてのテキストです。表題からお察しのことと思いますが、性的に過激で偏ったことが記されると予想されます。ここから先をお読みの際は十分にご注意ください。

【パネラー紹介】

  企画レポート第1弾からいかがわしさ満点ですが、文字通りいかがわしい企画でした。パネラーは稀見理都と永山薫の実質2人。有馬啓太郎は途中で合流しましたが、大井昌和は最後まで姿を見せず。どうやら連絡不行き届きがあったようでした。残念。

 永山薫といえば、こちらの著書で有名なエロ漫画の評論家です。 

twitter.com

永山薫 - Wikipedia

 エロ漫画の評論家というと危ない姿を想像するかもしれませんが、非常に紳士的で知的な方です。小谷真理さんによると女性に優しい気配りのできる人物で、巽孝之さんによるとバッハにも造詣の深い知的レベルの高い人物だとか。でも、専門分野になるとさすがにぶっ飛んだ切れ味と造詣の深さを見せつけてくれました。

 稀見理都といえば、『エロマンガノゲンバ』などで知られた評論家ですね。専門は美少女コミックです。ロリ・ショタ・ペド専門の私よりはまともそうな人物です。

twitter.com

えろまんがけんきゅう(仮)

 有馬啓太郎大井昌和はエロ漫画家です。一応、関連リンクを貼っておきます。

www.waruwaru.com

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有馬啓太郎 - Wikipedia

d.hatena.ne.jp

twitter.com

大井昌和 - Wikipedia

 

【祝・不健全図書50周年】

 では、企画本体のレポートに参りましょう。まずは、東京都が指定する不健全図書について。東京都は月に1回、18歳以下の青少年に悪影響を与えるけしからん本として、不健全図書なるものを指定しています。

 昔、私が本屋をやっていたとき、月に1回、東京都から指定図書に関するハガキが届いていました。しかし、発売日から2カ月くらいたってからやってくるので、肝心の本は既に店頭から消えている場合が多くて、何の効果があるのかさっぱり理解できなかったという記憶があります。

www.metro.tokyo.jp

 これが今年、めでたく50周年を迎えたとのことです。これを記念して(??)、指定図書のリストを稀見理都が入手し、不健全図書の歴史を調べるとともに、その内容について何人かで分担して分析・研究を行っているそうです。今回の企画はその中間報告というものでした。

 そもそも不健全図書がどのように指定されるのか。永山の説明をまとめてみましょう。毎月150冊くらいの本を東京都の青少年・治安対策本部のスタッフが集め、内容を1冊ずつ吟味するそうです。そして、それらの中から1~3冊が指定され、東京都青少年健全育成審議会にかけられます。この審議会では一部反対意見も出るようですが、基本的には都の指定がそのまま追認されるので、指定されたら100%逃れられません。指定された本は運が悪かったということですね。

 ただし、18禁ということではじめからゾーニングの済んでいる雑誌や書籍は審議の対象にならないそうです。《LO》なんかはあきらかにヤバい内容ですが、そもそも審議の対象から外れているので影響がないんですね。

www.dmm.co.jp

 今月指定されたのはこちらの本です。18禁指定をしなかったので不健全指定を食らったようですね。いずれamazonで表示できなくなるか? 

人妻たち隠された性体験を暴露! (いずみコミックス)

人妻たち隠された性体験を暴露! (いずみコミックス)

 

 先月指定されたのは2冊。まず、美少女枠がこちらの本です。紀伊国屋がWEBで在庫持っとる・・・。表紙でメンバーを確認する限り、《ばんがいち》の作家陣なので、出版社が半ば意図的に18禁と銘打たずに出したもののようです。だから指定されたんですね。廉価版コミックスなので、売り逃げでOKというものだそうです。 店頭から撤去されたころには勝負がついているということですね。

www.kinokuniya.co.jp

www.dmm.co.jp

 そしてこちらはBL枠です。最近は女性向けエロの指定が増えているそうです。

www.kinokuniya.co.jp

 不健全図書の指定にもジャンルの盛衰というか、はやりすたりというか、都の担当者の好みがあるそうで、最近はBLやバイオレンスに傾斜しているそうです。

 やや意外ですが、不健全図書に指定されても条例上の罰則はないそうです。ただし、業界内で自主的なルールが設けられていて、同じシリーズが3カ月連続で指定を食らうと取次ぎが扱わなくなるそうです。また、1年に同じシリーズが食らっていいのは5回までで、6回目でアウトだそうです。出版社もその辺は分かっているので、シリーズ名を変えたり、新しい会社を作ってそこから出したりと、いろいろ知恵を絞っているそうです。結局、エロ漫画はいかに売り逃げるかという世界だということですね。

 審議会の議事録も一応公開されているんですが、これがなかなかお笑いだそうです。例えば今年の4月の議事録ですが、

http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/pdf/09_singi/670/670gijiroku.pdf

 午後3時30分開会、午後3時49分閉会。わずか19分・・・。都の指定した事柄に対して「異議なし」と答えて議事を進めるだけの会です。不健全図書の審議なんかせいぜい5分程度でしょうから、なんともいい加減なことです。永山薫によると、審議会の委員の日当は20000円だそうです。時給約60000円ですか。なんと割のいい仕事なんでしょう。

 

【不健全図書の歴史】

 では、不健全図書の歴史を見ていきましょう。不健全図書指定が始まった最初の頃は、まだエロ漫画というジャンルは確立されていませんでした。そのため、昭和39~45年ごろまでは文字や写真の合版になっている本が中心だったそうです。代表的なところでは、『100万人のカメラ』『あまとりあ』『裏窓』といった雑誌です。映画などのエロい場面のスチールを寄せ集めて作った、安上がりの雑誌です。現在の感覚からすると大してエロいとは感じないレベルでございますが。

 コミックが指定され始めたのは昭和50年ごろからだそうです。しかし、まだ劇画が出てくる前で、「大人向けマンガ」といわれる文字・写真込みの雑誌だったそうです。感覚としてはまだまだ普通のエロ本に近いものですね。

wpb.shueisha.co.jp

 不健全図書の指定には都の担当者のマイブームが反映されているそうです。例えば、1970・80年代にはSMブーム、洋ピンブーム(洋物のエロ本)、シネマ系ブーム、実話系ブームなんてものがあったそうです。ただ自分の気になった類のエロ本を取り上げているだけのような気もしますが。

 また、都庁には、エロ漫画の新ジャンルを察知するのに5年ほどかかるという、タイムラグ的な特徴があるそうです。例えば、1980年代前半から出ていた劇画コミックについては、都は1987・88年ごろにどかどか指定し始めたそうです。また、美少女コミックは1986・87年ごろから出ていたそうですが、都が指定し始めたのは1991年だそうです。永山薫によると、当初、美少女コミックについてはエロ漫画の編集者も「こんな変なものでヌくやつがいるはずがない」と言っていたそうです。ところが、その後の美少女の隆盛は皆さんご存知の通りです。年々日本人がダメになってきたといういい証拠ですね。

 1992年ごろに有害コミックに関する規制の動きがあり、美少女コミックはここで大量に有害指定を受けました。そのため、1993年あたりから美少女コミックの刊行点数が激減したそうです。規制が強まるとジャンル全体が委縮して、一定のダメージを受けます。しかし、エロ漫画はカウンターカルチャーですから、規制をかいくぐって新しい表現が生み出され、復活していくものです。事実、美少女コミックは1990年代後半に復活し、現在もしっかりと命脈をつないでいます。所詮、どんな表現媒体も規制と表現のせめぎ合いだということですね。

wpb.shueisha.co.jp

 21世紀に入ってからは、2005年あたりまで年に150冊近く指定されていたそうです。しかし、ゼロ年代後半から指定される冊数が大きく減って、現在では年間30冊ほどになっています。また、ゼロ年代にはいよいよ都の担当者が腐に目覚めたらしく、BL・TLの不健全図書指定が始まりました。

ティーンズラブ - Wikipedia

 TLは最初、性器部分の修正が少なかったため、都に目をつけられたようです。規制がかかるまでは出版社は意図的に突っ走るようで、TLの不健全図書の指定が始まってからは、ちゃんとモザイクがかかるようになったそうです。最近はTLの主戦場がWEB上へと移行したので、10年代に入ってからはTLの不健全図書指定はほとんどないそうです。

 また、ゼロ年代の後半までは、不健全図書指定は男性向けのものが圧倒的に多かったのですが、最近は女性向けの割合が増加してきて、ほぼ互角の割合になっているそうです。

 と、企画で話されていた内容をまとめるとだいたいこんなところでしょうか。まだ中間報告ということで、これから分析していく部分が多いようです。是非、続報を楽しみに待ちたいと思います。

 

 最後に、不健全図書指定を食らった回数上位を部門別に並べてみます。

 

(出版社部門)

 1位:東京三世社

東京三世社 T3WEB

東京三世社 - Wikipedia

 2位:三和出版

三和エロティカ

三和出版 - Wikipedia

 3位:サン出版

Sun Publishing サン出版

サン出版 - Wikipedia

 

(著者部門)

 ぶっちぎり1位:八月薫 10回

⇒劇画と美少女の中間の絵柄なのでマークされやすいそうです。

book.dmm.co.jp

twitter.com

八月薫 - Wikipedia

 

(雑誌部門)

 1位:《コミックライズ》《コミックドルフィン》《コミックウインクル》 9回

http://www.takekowbow.com/img/df0703s.jpg

桃園書房「コミック ジャンボ」リニューアル : 自作汁生活(画像元)

ななな(テレカ):ウインクル - livedoor Blog(ブログ)