『レッド・クイーン4 暁の嵐』短評
今回のレビューは、6月に発売された〈レッド・クイーン〉シリーズの完結編です。
大団円と言っていいでしょう。主人公メアの葛藤と成長、陰謀の応酬をねじ伏せる国家論的収斂、階級を越えて繰り広げられる大戦、LGBTQ的視座、男性視点も含めた複数視点による重層な語りと意図的なミスリードなどなど、読者を惹きつける要素が多彩で、上下巻1000ページを超える大部ながら高いリーダビリティで一気に読み終えることができました。及第点をつけられるシリーズの幕引きになったと思います。
当ブログでこのシリーズを取り上げるのは初めてですが、コアなジャンル・ファンタジーとも、日本のライトノベル・ファンタジーとも異なる質感を有する、アメリカのヤングアダルト・ファンタジー。WEB上の海外ドラマを見ている感覚に近いでしょうか。日本のライトノベルよりは読者の年齢層をもう少し上に設定して書かれているので、LGBTQ的視座も挿入できます。
日本における〈レッド・クイーン〉は、SF・ファンタジーの界隈とも児童文学ファンタジーの界隈ともライトノベル界隈とも離れた中途半端な立ち位置にあるため、今一つ話題にならず評価されていませんしこれからも大きく評価が上がるとは思えません。テンプレートのてんこ盛りであることは間違いないですが、当ブログでも何度も書いている通り、たとえテンプレートな記号や仕掛けの組合せであろうと、作品を面白くする方法はいくらでもあります。〈レッド・クイーン〉は成功例として評価していい作品だと思います。