『短編ミステリの二百年3』短評
今回のレビューは先日東京創元社から発売されたアンソロジーの第3弾です。
今回、一気に厚くなって690ページ。ブックカバーをかけるのに苦労するほどですが、まあこのシリーズを購入するほどのミステリファンなら本の厚さに怯むことはないでしょう。相変らずの好企画。既読の作品も複数ありますが、ポースト、マクロイ、アームストロング、A・H・Z・カー、ブラウンなどなどEQMMおよびコンテストの歴史を辿りつつ古き良きミステリを味わうことのできる読書体験。すれっからしの読者の場合、ひいきの作家がいないことへの不満や短編の並べ方・構成への不満などが出てくると思いますが、脳内でアンソロジストと対決することも読書の愉楽の1つです。小森収の評論については、A・H・Z・カーの位置づけ、フレドリック・ブラウンの解釈など、賛否が分かれる部分もあると思われますが、資料的価値の高い力作なのは間違いないと思います。
バーでグラスを片手に紫煙を目にしながらページを繰るのが良いでしょう。重厚なクラシック・ミステリに乾杯。