『うるはしみにくし あなたのともだち』短評
今回のレビューは澤村 伊智の今月発売の新刊です。
昨年来、クオリティの高い新作が出続けて国産ホラーに久しぶりの活況が戻ってきている感がありますが、今年の夏は新刊が豊作でハイレベルの乱戦が展開されていると思います。この作品も乱戦の一角を占めるものでしょう。
顔の美醜を巡る呪いをテーマとした学園ホラー&ミステリの佳作です。顔の美醜がテーマであり、スクールカースト周辺の女子のせめぎあいと、美醜にまつわる女子生徒の心の闇が各所ににじみ出ており、血だの膿だの老化だの呪いの描写も適度に不快で振り切れていて、相変わらずホラーとして読者の生理をえぐる描写がうまい作者です。ミステリとしての外形は調っているものの、単体のミステリとして評価してしまうと恐らく凡庸。メインはあくまで人間の心の闇が醸す気持ち悪さです。
女子生徒の心の闇はえげつなくおどろおどろしいものでしたが、一方、彼女たちの騒動を見物しながら女子の美醜をランキングする男子生徒、女子を酒の肴にする男性教師、という男どものみっともない姿は、心の闇というよりは滑稽に思えました。おっさんだけで酒を飲んでいるともっとひどい下ネタも出てきますが。