otomeguの定点観測所(再開)

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第59回日本SF大会 F-CONレポート② 新SFレーベルKaguya Books始動!

 それでは、レポートをまとめられるものに限るので恐縮ですが、雑駁ながら企画レポートをあげていきます。まずは、27日夜の企画、「新SFレーベルKaguya Books始動!」から参ります。

 

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 このブログをご覧の方ならご存じの方も多いと思いますが、VG+(バゴプラ)はプラットフォーム的にSFに関する発信を行っているSF企業で、オンラインSF誌Kaguya Planetの発信、情報発信などのほか、SF掌編コンテストであるかぐやSFコンテストの主催でもあります。彼らがクラウドファンディングを経て立ち上げた新SFレーベル、Kaguya Books。私もクラファンで支援したこともあり、刊行を楽しみにしていました。SF大会前日に自宅に本が届いたので、行きの新幹線でページを繰りながら郡山に向かった次第です。

 企画には司会の井上彼方さん他、アンソロジーの執筆者として勝山海百合、淡中圏、稲田一声、十三不塔の各氏が登場。収録作品の紹介、執筆の経緯、かぐやSFコンテストに応募した経緯などについて語っていました。印象的だったのは、作家陣がとにかく楽しそうにかぐやSFコンテストについて語っていたこと。他の小説のコンテストに比べて垣根が低く、作家と読者が双方向であるうえ、オープンに様々な取り組みをしていたことで、主催も作家もコンテスト自体を楽しんでいたということ。彼らの言説にはまだまだ未熟な点がありましたが、若い書き手たちがオープンにつながり・楽しみ・盛り上がることはいいムーブメントです。

 アンソロジー単体の評価としては、SFジャンル内では一定の評価を受けるでしょうし、他のアンソロジーにピックアップされそうな短編もありますが、短編の出来が玉石混淆で、まだまだ荒削りの印象が強いです。次回刊行に期待しましょう。極私的には、収録短編の中では、白金に輝くくいが登場する寓意的な世界を磨き込まれた詩情でまとめ上げた、赤坂パトリシア「くいのないくに」がお勧めです。