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『怨毒草紙 よろず建物因縁帳』短評

 今回のレビューは先月発売の講談社タイガ、内藤了〈よろず建物因縁帳〉の7作目です。

  

怨毒草紙 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

怨毒草紙 よろず建物因縁帳 (講談社タイガ)

 

  シリーズ7作目ということで、安定したクオリティ。日本の量産型の伝奇・ホラーのシリーズの中では中堅どころあたりの作品でしょう。

 これまでのシリーズに比べるとストーリー展開に力が割かれていました。春菜がようやく仙龍に告白ということで、シリーズを追ってきた読者から見ればこちらが本筋になるでしょう。うん、春菜ちゃん、よく頑張ったよ。シリーズ開幕時のツンツンに比べると人間的に成長して丸くなった気がします。ツンデレの彼女とやや弱気な彼氏というペアですが、このまま順調に恋が進展するとは思いづらいので、次巻で一波乱あるかもしれません。

 ホラー部分についてですが、今回の怪異はエログロで気持ち悪さ重視。その分、これまで重視されてきた凄絶さ・壮絶さは抑えめです。内藤了の筆力なら凄絶なエログロも書けるような気がするので、極私的には今一つ。恐怖部分の詰めは次巻以降に持ち越した感じです。草紙の絡んだ事件を読者の予想に恐らく反するやり方で曳いていますが、そこは読んで確かめてみてください。後半が一気呵成になるプロット展開もいつもの調子でまずまずの読後感。次作は雨月物語ベースで長野を出て岡山での物語になるようですが、今冬の刊行を待ちましょう。