otomeguの定点観測所(再開)

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Zoom授業の課題というか愚痴

 さて、いつもの道に外れた話はやめて、少しはまともな話もしましょう。

  コロナの影響で学校も塾も授業停止になり、子供たちが学習機会を奪われる中、一部の塾がZoomを使って授業を開始しています。新しい試みということで割合に評判なようで、一部の塾は商機とばかりに営業をかけているようです。私も多少なりと関わっているところがあるので、Zoom授業が始まって出てきた感想を少しまとめてみたいと思います。

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chuju.tokyo

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 結論から言えば、Zoomは現時点で出来る最善の手法なんだと思います。一部、セキュリティの問題が取りざたされていますし、私も含めてまだ操作に慣れていない点もあるし、動作が不安定なふしもありますが、とりあえずSkypeなど他の同種アプリに比べて機能的で使いやすいと思います。

 また、オンデマンドの配信だと、自分のペースで受信できるという利点がある一方で、授業が子供のペースになってしまうという大きなマイナスがあります。自発的に学ぶことのできる子供ならいいでしょうが、そんなのは全体の1%にも満たないわけです。動画を止めて何度も席を立ったり、早送りで適当に飛ばして見たことにしたり、親御さんがついている状況でもなかなか落ち着いて受講できない子供も多いようです。そうすると、やはり画面越しとはいえ顔を知っている先生とリアルタイムでやりとりをするということになると、それなりに緊張感も出ますし、時間のメリハリもつけられます。今のところ、親御さんや子供さんの感想もいい感じで、無難にスタートを切った感は強いです。

 しかし、上のリンク先と共通するところもありますが、しばらく使ってみていろいろ課題も見えてきました。愚痴みたいになってしまって恐縮ですが、授業を発信する側の意見としてとらえていただければと思います。

 ①準備が大変で時間がかかる

 コンテンツを発信する側のデメリットとして、まずこれがあります。通常の授業であれば黒板やホワイトボードにさらっと板書して終えられるところも、生徒が受信できる画面の大きさが限られるので、相当な準備をして板書案を作ったり、パワーポイントやフリップなどを作ったりして授業に臨まなければなりません。私はホワイトボードを使っていないので、事前に板書パターンを全て画像に取り込み、説明の流れに応じて子供に提示するという手法をとっています。そのため、通常の授業準備の数倍の時間と手間をかけて授業に臨む自転車操業が続いています。恐らくWEB上の声は生徒・保護者側のものがほとんどだと思いますが、作り手の方にかなり負担がかかっていることは知ってほしいと思います。

 ②疲れる

 慣れていないということも大きいのでしょうが、授業を終えた時の疲労感もかなりのものです。通常の授業の倍の疲れとストレスが降ってくる感じです。1日ぶっ通しで配信を終えると、疲労困憊になります。そして帰宅して翌日の授業の予習をしているわけです。配信を始めてまだ2・3週間ほどですが、現場によっては疲弊し始めているところもあり、早期のコロナ収束を心から願う次第です。慣れてくれば疲労の度合いも減ってくるとか、仕事なんだから疲れるのは当たり前だとか、ブラックな声もいただきましたが。コロナ対応のために限られた人員で現場を回しながら、かつ新規のことをやっているわけで、繰り返しですが現場の負担が大きいことを知ってほしいと思います。

 ③生徒の手元が見えない

 これ、大きいですね。大学の講義や一部の優秀な生徒向けであれば、コンテンツを提供したりディスカッションをしたりしていれば、しっかり受け取ってくれるだろうと信用できます。しかし、そんなできる生徒はごく一部です。授業をしながら生徒の手元を見て、真剣にノートをとっているか、間違ったことを書いていないか、落書きをしていないかなど、机間巡視をしながらリアルタイムでチェックしていくことが必要です。それが一切できず、生徒の自己申告でできる・できない、というか、やっている・やっていないを判断するしかない。親御さんがうまく管理をしてくれていればいいんですが、心もとないところです。

 ④宿題のチェックがしにくい

 塾によってやっているところとやっていないところがあるはずですが、これも大きいです。一応、画面上にページをかざしてやったかどうかの大まかな確認はできますが、講師が直接、赤を入れることができません。宿題のチェックって、ただ目くら判でハンコを押したりサインをしたりするわけではありません。算数だったら正しい立式をしているか・筆算をちゃんと書いているかとか、国語だったら漢字のとめ・はね・はらいなどがきちんと書けているかとか、社会だったら用語をちゃんと漢字で書いているかとか、生徒の学習の精度を高めるために講師が見るべきポイントはたくさんあります。それがほとんどできず、生徒・家庭まかせになってしまいます。

 ⑤質問対応がやりにくい

 双方向でやりとりしているから問題ないのでは? という向きもあるでしょう。しかし、算数の図形、理科の電気や力学など、図を用いて説明をしなければいけない問題の場合、③と同じくですが、手元が見えないので、生徒がどこを分かっていないのか、講師が把握するのにかなり時間がかかります。理解不十分な点を残したまま単元が進んでしまうと、後で取り返すのが大変になるので、心配は多いです。

 

 今、私が考えている問題点をざっと挙げてみましたが、多くの先生方が試行錯誤なさっているのではないかと思います。現状ではZoom配信は最善の策だと思いますが、やはり対面でのライブ授業には及びません。

 とはいえ、本来、勉強とは塾や学校に頼るものではないはずです。極めてアナログな発送ですが、自分で鉛筆を動かして自学自習することが勉強の基本です。せっかく家庭学習時間がたっぷりとれるのですから、この機会にきちんと教材に向き合い、勉強を深化させていくのもいいのではないでしょうか。

 ・・・まあ、そんなことができるのは一部の優秀な子供だけで、私もそうでしたが、大部分の子供は勉強嫌いです。休みがあるなら間違いなく遊んで馬鹿になります。それを防ぐために学校があり、学校が不十分と見なされているから必要悪として塾があるわけですが。子供たちの学習効果を考えても、コロナの早期収束と対面授業の早期再開を心から願う次第です。