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2019極私的回顧その1 マラソン・長距離(男子)

 それでは、本年度の極私的回顧を始めます。まずは、本日、福岡国際マラソンが行われ、2019年の競技に一区切りついたマラソン・長距離(男子)からいきます。

 

2018極私的回顧《スポーツ》① マラソン・長距離(男子) - otomeguの定点観測所(再開)

2017年極私的回顧《スポーツ》① マラソン・長距離(男子) - otomeguの定点観測所(再開)

2016極私的回顧プレ④ マラソン・長距離(男子) - otomeguの定点観測所(再開)

【2019福岡国際マラソン

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福岡マラソン | 大会結果・記録

福岡国際マラソン、日本勢トップは2位藤本 ダザが優勝 - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル

【大会結果】藤本拓、日本勢最高2位も大迫の日本記録に届かず/マラソン (1/2ページ) - スポーツ - SANSPO.COM(サンスポ)

 2018年、服部勇馬の優勝で沸いた福岡ですが、今年は盛り上がりに欠けたレースになりました。レース内容については特にコメントすることもないです。瀬古御大も微妙な反応だったようですし。

瀬古氏「うーん、なんと申しましょうか」 レース後会見 - 一般スポーツ,テニス,バスケット,ラグビー,アメフット,格闘技,陸上:朝日新聞デジタル

 MGCファイナルチャレンジと称し、日本記録突破のためにペースメーカーが用意されてはいました。しかし、MGCから3カ月足らずという短い間隔のため国内招待選手は揃わず、海外招待選手も二線級です。かつては世界最高のレースとされていた福岡は今やローカルマラソンに過ぎず、男子単独レースを開催する意味はもはやありません。海外招待選手の層は同日開催の大阪マラソンの方が厚いくらいですし(しかも男女同時開催)、大阪の男子の優勝タイムは2時間7分台で福岡に遜色ないものでしたし。日本のエリートマラソンは全て市民マラソンに切り替えていいと思います。

トップページ|第9回大阪マラソン

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招待選手・ゲストランナー紹介|第9回大阪マラソン

 この後、びわ湖、東京とファイナルチャレンジが設定されていますが、日本記録突破の可能性があるのは、レースとして格上で外国招待選手の層が厚い東京のみでしょう。当ブログで何度も書いていることですが、WMMの1つである東京とローカルマラソンである福岡とびわ湖を、国内事情を鑑みて同格として扱っていることがそもそもおかしいです。まあ、今さらですが。

 

【男子マラソン 収穫ゼロの2019年】

 それでは、2019年の総括にいきましょう。昨年、男子マラソン復権ということで久しぶりにマラソンでポジティブなテキストを書いたんですが、2019年は前年の勢いが全く感じられず、東京五輪に向けて収穫のない1年になってしまいました。世界のマラソンにおいては、キプチョゲのマラソン1時間台という偉業が成し遂げられた歴史的な1年でしたが、日本勢に限ると景気の良くない年でした。

五輪マラソン 東京から札幌へ - otomeguの定点観測所(再開)

人類初のマラソン1時間台!! - otomeguの定点観測所(再開)

2019ドーハ世界陸上総括 - otomeguの定点観測所(再開)

MGC⇒あえて否定的に評価してみる - otomeguの定点観測所(再開)

2019陸上日本選手権&ドーハ世界陸上代表発表 - otomeguの定点観測所(再開)

2019日本選手権10000m⇒話にならん凡戦 - otomeguの定点観測所(再開)

大迫のツイートについて感想 - otomeguの定点観測所(再開)

2019春マラソンまとめ・・・というよりはMGCをdisってみた - otomeguの定点観測所(再開)

2019東京マラソン⇒収穫のない凡戦 - otomeguの定点観測所(再開)

2019ニューイヤー駅伝・箱根駅伝雑感 - otomeguの定点観測所(再開)

 春マラソンでは記録の伸長も新勢力の台頭も見られず、9月のMGCは凡戦をマスコミや関係者がお手盛りで称賛するお約束のような展開でした。本来、エース級の走りをしなければいけない大迫や設楽はぱっとせず、中村と服部という二線級の選手が五輪代表をさらっていく始末。主軸となるべき選手の勝負弱さだけが印象に残りました。

 大迫の評価は下げるべきです。オレゴン・プロジェクトに参加してプロランナーと称しながら、2017年世界陸上では代表権を取れず、MGCでは実業団の選手に競り負けました。しかも、MGCでは自分から動いて主導権を握る場面がない敗戦であり、勝負弱さ・メンタルの弱さをあらわにしたレースとなってしまいました。

 逃げ宣言をして暴走し、失速した設楽は問題外でしょう。結果を求められるレースで無茶をして失敗したのですから、もっと非難されるべきです。

 今年、唯一痛快だったのは、五輪マラソンが札幌に移転したことでした。繰り返しですが私はMGC反対の立場です。本来、トラックの長距離のタイムを地道に強化して、そこからスピードのあるマラソン選手を育成するのが強化の王道のはずです。しかし、強化の軸を見据えないまま、東京なら暑くて日本人有利だからメダルが狙える、という局所的発想から奇策として打ち出されたのがMGCです。一定の盛り上がりがあったことは認めますが、マラソンの本質的な強化に寄与したとは思えませんし、危機的状況の原因にもなりましたし。陸連の自画自賛としか思えません。

 幸い、この2年間の日本の迷走が全てちゃぶ台返しにされました。これを契機に地道な強化にしっかり目を向けてほしいところですが、まあ無理でしょうね。

 陸上においてマラソンはロードのマイナー種目です。陸上のメインであるトラック&フィールドの種目がちゃんと東京で開催されるのなら、ロードの種目を別都市にするのは大した変更ではありません。マラソンが陸上の花形だと勘違いしている日本が騒ぎすぎなのです。

 来年の東京五輪では何とか入賞は確保してほしいところですが、どうイメージしても日本勢が上位に来る姿が浮かびません。とにかく、MGCファイナルチャレンジがびわ湖・東京と続きますので、そこで救世主が登場することを期待しましょう。

 

【引き続き壊滅状態の男子長距離】

 これも何度も書いていることですが、MGCでばか騒ぎをしている間に、2019世界陸上では3000mSCの代表も送り込めず、男子トラックの長距離はついに代表選手ゼロという極限状態になりました。5000m・10000mについては、これで世界陸上アジア大会の主要国際大会において3大会連続で代表派遣が見送られたことになります。

 本来なら、MGCに出場しなかった旭化成勢を中心に、日本選手権でドーハを目指して激戦が展開されるべきだったはずです。しかし、参加標準記録を巡って必死に戦っていた女子とは真逆に、男子は5000m・10000mともにスローペースに堕した凡戦に終わりました。10000mについては、陸連がナイター開催にして実業団のアフリカ選手を複数ペースメーカーにつけてくれたにもかかわらず、日本選手がアフリカ選手についていけないという体たらくでした。

 このままでは、地元開催の東京五輪で男子長距離3種目の代表ゼロという無様をさらす可能性が極めて高いです。マラソン云々以前に、長距離3種目に代表を送り込むことこそ、日本のマラソン・長距離界が一丸となってやるべきことのはずです。

https://www.jaaf.or.jp/files/upload/201903/11_124516.pdf

 ちなみに五輪の標準記録は

 3000mSC 8:22.00

 5000m 13:13.50

 10000m 27:28.00

 ですので、3000mSCと5000mは日本記録に近いタイム、10000mは日本記録更新が必須となります。3000mSCは塩尻や阪口が踏ん張ってくれたら何とかなるかもしれませんが、5000m・10000mについては望み薄ですね。毎年同じことを書いていますが、この閉塞状況を打破する新星の登場を切に祈るのみです。

【12/3追記】

 関連記事のリンクを貼っておきます。こういうのをコップの中の争いといいます。

日本陸連がMGCファイナルチャレンジを〝過剰演出〟しなければならない理由 WEDGE Infinity(ウェッジ)