otomeguの定点観測所(再開)

文芸評論・表象文化論・現代思想・クィア文化・社会科・国語表現・科学コミュニケーション・初等数理・スポーツ観戦・お酒・料理【性的に過激な記事あり】

2020極私的回顧その20 アニメ

 極私的回顧20弾はアニメです。今回は例年通り、商業アニメとアートアニメを混在させた並びになっております。また、いつものお断りですが、amazonなど関連サイトのレビューをテキスト作成の参考にしております。

 2019極私的回顧その20 アニメ - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2018極私的回顧その14 アニメ - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2017年極私的回顧その14 アニメ - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2016極私的回顧その14 アニメ - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

2020・1~3月・冬アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2020・4~6月・春アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2020・6~8月・夏アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

2020・10~12月・秋アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

【マイベスト5】

 

 

1、ウルフウォーカー


映画『ウルフウォーカー』予告編

映画『ウルフウォーカー』オフィシャルサイト (child-film.com)

カートゥーン・サルーンJP公式(「ウルフウォーカー」10/30公開)さん (@cartoonsaloonjp) / Twitter

Wolfwalkers - Wikipedia

 2020年度の1位、いろいろ迷いましたが、やはりこの作品にしました。ミニシアターの上映のみにとどまったのが極めて惜しまれる、普遍的なエンタテイメント。この作品が広く高く評価されないところに、日本の表象文化の偏りの一端を見てしまうのは私だけでしょうか。

 当ブログでレビュー済みなので、再掲します。

 カートゥーンサルーンケルト三部作完結編は、前2作を上回る完成度にして、過去最もエンタテイメントとしての強度の高い傑作になりました。「ポスト・ジブリ」とも称されるカートゥーンサルーン。過去作品も美術・演出・音楽などの面では高い評価を受けてきました。そして、ジブリアニメの影響を恥じることなくひけらかす画面構成。日本人的な視座からすると、日本にジブリの後継スタジオがないことに悔しさを覚えつつも、ケルトの意匠をまとっているとはいえどこか借り物的な匂いがしていたものです。また、寓意性の高い物語はファンタジーとして正当な系譜に属するものでありながら、エンタテイメントとしての強度はそこまで高くなく、観ていてやはり物足りなさを覚えていました。だから『ソング・オブ・ザ・シー』は年間ベストの考慮からはじいたんですが。

 しかし、今回の『ウルフウォーカー』はそれら極私的なマイナス評価を全てぶち壊してくれました。上のリンク先にもありますが、『もののけ姫』や『かぐや姫の物語』の影響を色濃く残しながらも、過去のジブリ作品に全く劣らぬ美しい画面は、「絵」が動くというアニメーションの源流に通じる豊かな表現です。水彩画や鉛筆画のタッチで構成された森の自然の風景は解放的で古代アイルランドに根付いていた自然とオオカミへの畏敬を想起させ、シンメトリックな街の描写とうまく対照され人間界と異界との区分けを分かりやすく伝えてくれます。また、2Dも3Dも自在に駆使したダイナミックなアクションは、それだけでも観る価値があると思います。

 2人の少女を主人公にした物語の構造はいたってシンプルであり、それゆえに心に響きます。自然や異界の者が人間の抑圧に立ち向かう、少女が大人や男の抑圧に立ち向かう姿は、フェミニズムの意匠をまといながらもペイガニズムの精神が受け継がれたものでもあるでしょう。敬虔なピューリタンである護国卿を悪役として描いたことには正直違和感もありましたが、人間と自然や異界との共存を言祝ぐラストは、主題の提示をあいまいにしてお茶を濁した『もののけ姫』よりもむしろ物語として完成・昇華されたものだといえます。エンタテイメントとしての強度が非常に高い作品になりました。

 過去作の実績から一部のミニシアター上映にとどまっていますが、是非上映館が拡大されて多くの方に観てほしい作品です。

 

 『ウルフウォーカー』短評 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

2、劇場版Fate/Stay night[Heaven's Feel]


劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」第三章 スペシャルダイジェスト映像


劇場版「Fate/stay night [Heaven’s Feel]」Ⅲ.spring song 大ヒット公開中PV

劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」Ⅲ.spring song (fate-sn.com)

Fate/stay nightさん (@Fate_SN_Anime) / Twitter

Fate/stay night - Wikipedia

 2004年のゲーム発売当時から追ってきたユーザーとしては、胸の高鳴りが止まらなかった完結編。ライダーの見せ場をこれだけ作ってくれればお腹いっぱいです。

 こちらも当ブログでレビュー済みですね。再掲します。

 面白いに決まっているから、四の五の言わずに観に行け。以上。いや、それ以外に何を言えと? 白熱の第3ルート、数々のハイライトシーンをほぼことごとく映像化し、原作をトレースしながらも味のあるシナリオワークを行い、スタッフも声優も気合入りまくりで、これだけの予算と時間をかけたのです。細かい論評は不要でしょう。2004年に始まった『Fate/Stay night』の長き旅の終着点として、大いに満足できる出来になりました。

 見せ場も見所も数限りなくありますが、一つ上げるとすれば、やはりこの作品最大のハイライトである「騎英の手綱(ベルレフォーン)VS約束された勝利の剣(エクスカリバー)」。ここがしょぼかったら低評価にしてやろうとも思っていましたが、想像以上に稀有壮大で胸熱くなる映像でした。

 2020年度のアニメのベストはこれで決まりでしょう。原作を知らなければ理解できないシーンも多々ありますが、それも一興。分からなければ、映画を観終わってから原作ゲームをコンプリートすればいいだけです。どうせ面白いんだから心配いりません。

 さて、次は幻の第4ルート・イリヤルートの映像化ですね。今回の映画でも士郎とイリヤのイチャイチャシーンはいくつかありましたが、やはりちゃんと最初のシナリオ通り映像化して、イリヤを救済しましょう。もちろんR18指定でイリヤの麗しき御姿つきで、できればセラとリズも脇に添えて・・・。

 『劇場版Fate/Stay night[Heaven's Feel]』短評 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

3、ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN


TVアニメ「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」PV第2弾


TVアニメ「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」番宣CM

アニメ「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」公式サイト (w-witch.jp)

「ストライクウィッチーズ ROAD to BERLIN」公式さん (@RtbWitch) / Twitter

ストライクウィッチーズ - Wikipedia

 こちらも長年極私的に追ってきたシリーズ。レビュー済みばかりですみませんが、こちらも再掲で。

 長年追いかけているシリーズの第3作。ブレイブもノーブルもルミナスもそれぞれの魅力がありますが、やはり501にとどめを刺します。服部静夏を加え新生なった501で、主人公・宮藤芳佳の成長した姿を中心に展開された物語は、10年間の渇きを癒してくれる激熱のものでした。501がエース集団たることを納得させる高度な戦闘描写、キャラを順番に掘り下げていく定型の話数構成、お約束のバカとエロ、進化したネウロイとのつばぜり合いなど、501がウィッチーズのシリーズにおいて原点にして頂点であることを再確認できる、充実した視聴体験でした。鬱積した思いを込めて1位に推します。

 ただ、せっかく服部静香をメインに加えたのに、固有魔法を発現しなかったのがただ一つの不満です。彼女にあれだけ焦点を当てたのだから、固有魔法に基づいた見せ場を作ってやるなり、501に欠けてしまった魔眼をあてがうなりすればよかったと思うのですが。

 2020・10~12月・秋アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

4、乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…


【はめふら】TV アニメ「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」ノンテロップOP

TVアニメ『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X』 (hamehura-anime.com)

「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…X」TVアニメ公式さん (@hamehura) / Twitter

乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… - Wikipedia

 2020年の春アニメで一番良かったのがこちら。何度も言いますが、ダークホース枠ではなく本命枠。少女小説ライトノベルの歴史上に残る作品はやはり面白かった。それだけのことです。今年は2期もあるので引き続き楽しみです。

 ラノベにおける「悪役令嬢もの」ジャンルの草分けであり最大のヒット作にして、放送前から極私的には期待度の高かった今期の安定覇権枠。原作未読の層にとってはノーマークでありダークホースだったかもしれません。しかしそもそも、原作はなろう系ラノベおよび異世界転生ものにおける代表格の1つであり、与えた影響を考えればライトノベルの歴史に残る作品の1つでもあります。もっと早くアニメ化されても不思議のなかった作品です。面白い王道ラノベを多少のアニオリを加えつつも原作に沿って素直にアニメ化した結果、やっぱり非常に面白かった。それだけです。

2020・4~6月・春アニメ極私的回顧 - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

これまで当ブログでは女性向けレーベルの作品をそういえばほとんどレビューしていませんでしたが、もっと早くコメントしておくべきだった作品ですね。良質のTVアニメも話題になりましたが、そもそも原作は「悪役令嬢もの」というジャンルを切り開いたライトノベル史に残る名作。乙女ゲーム化も発表され、アニメ第2期も控えており、現実をメタ化しながらまだまだ楽しませてくれそうです。

 2020極私的回顧その7 ライトノベル(文庫) - otomeguの定点観測所(再開) (hateblo.jp)

 

5、ごん GON, THE LITTLE FOX


アニメ「ごん / GON, THE LITTLE FOX」予告編 第1弾


『劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX -』メイキング  - GON Behind the Scenes - Long ver. -


『劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX -』八代健志監督コメント映像

劇場版 ごん - GON, THE LITTLE FOX - 公式サイト (gon-cinema.jp)

『ごん GON, THE LITTLE FOX』公式さん (@gon_tecarat) / Twitter

 本年のアートアニメ枠といったら失礼でしょうか。童話・ごんぎつねの世界に、人間と動物の垣根を払った新解釈を加えた、人形アニメーション。誰もが知っているお話ですが、それでも画面に吸い込まれていくような美しさ。木の味わいを生かした独特の造形が、素朴なキャラクターと昔話のあたたかな世界を優しく表現していました。

 

【2020年とりあえず総括】

 新型コロナのため制作に多大な影響が出たアニメ業界。改めて、困難な状況下で優れたコンテンツを発信し続ける関係者の皆様に御礼申し上げます。仕事を進めるうえで大変な1年だったはずですが、アニメのコンテンツの充実ぶり、特に秋以降の大作・傑作のラッシュは圧巻で、近年にない大豊作になりました。アートアニメも収穫作が多く、非常に満足できる1年でした。

 引き続きコロナで仕事を進める苦労の多い状況だと思いますが、2021年の冬アニメの昨年秋以降の流れを受けて充実した状況が続いています。1ユーザーとして、必死に観て・買って、支えていくしかないですね。